売却益についてはシミュレーションが必要

源泉徴収ありの特定口座で生じた売却益は?

 もう一つ考えられるのが、「源泉徴収ありの特定口座」で生じた売却益(譲渡所得)です。

 例えば、売却益が生じている口座と売却損の生じている口座がある場合、両者を相殺するためには、所得税の確定申告が必要です。

 もしくは、過去から繰り越した売却損(譲渡損失)と、源泉徴収ありの特定口座で生じた利益を損益通算するためにも所得税の確定申告が必要となります。

 会社勤めの方など、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の支払いが必要ない場合は、住民税においても確定申告した方が有利ですから、所得税の確定申告書を提出すればそれでOKです。

シミュレーションが必要なケースとは?

 しかし、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の支払いが必要となる方の場合は、利益が生じている口座の利益と損失が生じている口座の損失の金額がどれくらいかにより、住民税で確定申告する、しない、どちらが有利になるか異なります。

 同様に、繰り越した譲渡損失と当年の利益の損益通算をする場合も、両者の金額がどれくらいかにより有利・不利が異なってきます。

 例えば、繰り越し譲渡損失が50万円、令和2年の売却益が500万円というケースであれば、繰り越し譲渡損失の相殺で還付される税額より、公的保険料の負担増の方が大きくなると思われますので、所得税では申告するほうが、住民税では申告しないほうが有利になります。

 これ以外にも、譲渡所得の場合はさまざまなケースが想定され、それぞれ結果が異なるため、かなり複雑で難解です。しっかりとシミュレーションして、有利な方を選択するようにしましょう。

 なお、「源泉徴収なしの特定口座」、もしくは「一般口座」で生じた売却益については、所得税においても住民税においても確定申告が必要です。上記のような所得税と住民税で異なる扱いを受けることはできない点に注意してください。