相場の半歩先を行く、1歩先に行ってはいけない

 今、気をつけなければならないことは、年後半、米景気が過熱するリスクがあることです。米国でワクチンが一定の効果を発揮して経済が正常化すると、リベンジ消費が出てきます。リベンジ消費とは、コロナ禍でできなかった消費が一気にまとめてドンと出てくることです。そこに、バイデン政権による1.9兆ドルの景気刺激策が出ると、米景気は一気に過熱期に入ってしまうリスクがあります。そうなると、景気はいいのに株価が下がる可能性があります。もしそうなった時は、株式市場から脱出する必要があります。

 そう聞くと、「それなら無理して株を持ち続けないでさっさと株を売ってしまおう」と思う方もいるかもしれません。そこに落とし穴があります。

 私がファンドマネージャーの時に徹底していたのは「予断を持たない」ことです。予想は当然しますが、予断は持ってはいけません。年後半、米景気が過熱して株価が下がるようになるというのは、現時点の「予想」です。予想に基づいて、早く動き過ぎてはなりません。

 ファンドマネージャー時代に肝に銘じていたことですが、「相場の半歩先を行く」ことを目指すが、決して「1歩先を行ってはならない」ことです。最後の一歩が、ものすごく大きな動きになるかもしれません。あまりに早く動き過ぎると、最後の大きな一歩に耐えられなくなります。

 私は「年後半に米景気が過熱する」と「予想」していますが、そうならないかもしれません。米景気は、年後半もフラフラと不安定な回復が続き、来年もそのまま巡航速度の景気拡大が続いてしまうかもしれません。そうなると、世界株高が延々と続く可能性もあります。先読みして早くに株を売ってしまうと、取り返しがつかなくなります。