株価を下げたくないFRB

 独アリアンツの首席経済アドバイザーであるモハメド・エラリアン氏が、CNBCのインタビューに答え、年初に見られた米国の長期金利の上昇に関して、「FRB(米連邦準備制度理事会)は現状の政策はかなりの困難を迎えるだろう」と指摘、「財政政策や家計から注入される潜在的な流動性は今年だけでGDP(国内総生産)の20~25%にも匹敵する」と述べた。

 一般的に市場や経済に積極的に関わっていく「大きな政府」を標榜するとされる民主党政権においては、ドル安が進みやすいとされており、バイデン政権における政治主導によるドル安は2021年のリスクシナリオの一つである。

 エラリアン氏は次のように続けた。

「FRBは現在、マーケットのあり方を微調整しようとしている。今年最初の5日間で、2年と10年、2年と30年でイールドカーブは20~23ベーシスポイントほどスティープ化した。それは5日間の動きとしてはかなり大きいが、長期的な経済見通しという点で起きたことと一致している。すると直ちに、ブレイナード、クラリダ、パウエルが集まり、イールドについて口先介入した。FRBがイールドカーブの動きにこんなにも早く行動したことは興味深い」

 FOMC(米連邦公開市場委員会)が開かれているが、市場は政策の大きな変更はないと見ているのか、金利は今のところ落ち着いた動きを示している。今年年初に見られたような金利の急激な動きがあった場合、FRBは慌てて火消しに回ることが証明された。金利を上げたくない、上がっては困るという意図が露呈した結果となった。

 エラリアン氏は、金利の急激な上昇によってFRBが2つのコントロールを失うことを恐れていると指摘している。

「もしイールドの動きが早すぎる場合は、金融安定の鍵である2つのコントロールを失うことを示している。一つは、TINAという考え方(There is no alternative risk assets:株を除いて他に投資可能なリスク資産はない)である。二つ目はDCF(ディスカウントキャッシュフローモデル)が発している『株を買え、株を買え』というメッセージである」

 金利の上昇と株安、そして金利の上昇とドル高がそれぞれ表裏一体であるとするならば、金利の急激な上昇による株価を断固避けたいという思惑がFRBにあるとするならば、ドル高というよりは引き続き、ドル安傾向が続くと見て良いだろう。

 イタリアの政局不安定化を背景にユーロが売りトレンドに転じている。ポンドは引き続きドルに対して堅調である。ドル/円はもみ合いながらもドルがじり安の展開。オセアニア通貨ではNZドル/ドル、豪ドル/ドルの強さが継続している。

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