需給以外の要因

高値更新を続ける米株式市場に疑問符

 米株式市場が年明け以降も高値更新を続けている。ワクチン接種による経済活動の回復への期待は従来ほどの強さは感じられなくなっているが、追加の景気刺激策の実現への期待感がリスク選好度を高めている。12月の米雇用統計で非農業部門雇用者数(NFP)は前月比14万人減となり、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を強く受けて雇用情勢が悪化していることが確認された。先行きの景気への不安を煽る内容だが、弱い内容が示されたことにより、バイデン次期政権が大規模な経済対策を打ち出すとの期待が高まった。昨年12月に成立した9000億ドル規模の追加経済対策に続いて、さらに数兆ドル規模の大型経済対策を打ち出す方針。ブルーウェーブとなったことで民主党が法案を成立しやすくなっているため、景気浮揚策実現への期待が膨らみ、主要株価指数は軒並み最高値を更新している。

 リスク選好ムードは原油相場に及んでおり、株価上昇に牽引される格好で原油相場も上昇している。株高が続くと原油相場はもう一段値を上げる可能性がある。しかし、米国内では新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかかっておらず、ワクチン接種も予定より大幅に遅れている。期待感が先行したが、NFPが8ヶ月ぶりのマイナスとなるなど雇用回復に急ブレーキがかかっている現状からも目を背けるわけにはいかない。現状の雇用状況からすると、2021年第1四半期(1-3月期)の米経済はマイナス成長となる可能性も十分あり得る。また、大型財政出動に対して慎重な中道派の議員も民主党内には多く存在しており、議席数の過半数を獲得したとはいえ、コロナ対応のさらなる追加経済対策に関しては法案成立が遅れる可能性もある。これまでの大規模な金融緩和に対して警戒する動きも見られており、投資家の不安心理を表す恐怖指数(VIX指数)は警戒領域(20以上)での推移が続いている。市場への大量の資金流入、米長期金利の上昇、大型の経済対策によって引き起こされる経済の過熱感と、すでにバブルが弾ける材料も出揃っている。バイデン大統領が就任する1月20日以降、高値更新を続ける株式市場を楽観するのはあまりにリスクが大きい。

VIX指数とNYダウ(ドル) 

(各種データを基にクリークス作成)

原油価格と主要株価指数の関係

(各種データを基にクリークス作成)