「新型挙国一致」体制で科学技術の自力再生に邁進

(4)「新型挙国一致」体制で科学技術の自力再生に邁進

 これも会議における特筆すべき点です。

 共産党指導部は、

・米国との関係が長期的、戦略的、全体的に対立していくこと
・米国が国家安全保障の観点から、科学技術の分野で、輸出規制、取引停止、企業制裁などを通じて、中国の経済力、技術力、そして軍事力を封じ込めようとしていること
・その趨勢と局面は米国一国に留まらず、同盟国を中心に、欧州や日本など、技術先進国にも波及していくこと

 この3点を前提に、「国家戦略としての科学技術力を強化する」ことを、来年度に取り組むべき任務の最優先事項に据えたのです。

 会議は、科学技術の分野でイノベーションを推進するために、国の組織者としての役割、企業の主体的役割、シンクタンクや大学など研究開発機関の役割を統合させることの戦略的重要性を提起しました。官民が一体となり、「新型挙国一致」体制で、「国家の発展と安全を制約する重大な難題の解決に尽力する」という新たな目標設定をしました。

 まさに、外国の企業、技術、資本に依拠するのではなく、中国経済を持続的に発展させ、世界に誇る技術力、ブランド力を駆使するための自力再生戦略と解釈できます。

 そのために、十年という時間軸で基礎研究を実施していく行動計画を制定していくと言います。これから十年というのは、習近平政権になって打ち出した産業政策で、国際的にも物議を醸してきた「中国製造2025」を跨ぐことになり、基礎研究、科学技術力向上を通じて製造業の充実、産業構造の転換をもくろむ壮大なプランだと理解できます。

 これから、全国各地に「基礎学科研究センター」を、条件が伴う地域には「国際・地域科学技術イノベーションセンター」を創設し、政府はそれを支持していくと明記しました。

 科学技術やイノベーション開発という意味で、政府がこれまで戦略的に重視、支持してきたのが北京、上海、深センですが、私自身は、今後、同センターの創設を含め、湖北省武漢市、江蘇省南京市、四川省成都市、安徽省合肥市、陝西省西安市という五都市の動向に注目していくつもりです。