「賃貸住宅への傾斜と下支え」が次なる不動産政策

(6)「賃貸住宅への傾斜と下支え」が次なる不動産政策

 近年、中国政府の不動産市場への政策の根幹は、「住宅というのは住むためのものであり、投機のためのものではない」というものです。不動産バブルを警戒し、同市場への投機マネーに警告を与えることを目的にしています。中央政府として、引き続き不動産バブルの形成と崩壊を、中国経済にとっての最大のリスクの一つと認識しているのです。

 その意味で、会議が「大都市における住宅の突出した問題を解決する」、「保障性のある賃貸住宅を高度に重視し、分譲と賃貸住宅が公共サービスにおいて同等の権利を得られるようにする」、「土地供給も賃貸住宅の建設に傾斜させる」と明記したのは特筆に値します。

 私の分析では、やはり新型コロナや景気の相対的低迷を受けて、特に都市部で生活する若年層の雇用や収入を懸念しているということだと思います。

 この層は、中国で現在4億人いる中産階級に属し、科学技術やイノベーションを含め、中国経済を長期的にけん引していく、マーケットにおける、労働や消費を含めたアクティブプレイヤーです。彼ら、彼女らの支出圧力を緩和することで、社会不安を削減し、経済成長に生かすというもくろみがあるのでしょう。

 賃貸住宅の充実は、同時に投機マネーが流れる分譲住宅の氾濫をけん制し、不動産バブルの形成・崩壊という政府の懸念を解消することにもつながるという意味で、一石二鳥の良い政策だと踏んでいるのでしょう。実際に、この政策は中国市場において「世論受け」する類のものです。