金融緩和、財政刺激の手は安易に緩めない

(2)金融緩和、財政刺激の手は安易に緩めない

 会議は、来年のマクロ政策について、連続性、安定性、持続可能性の3つを保持するとしたうえで、次のように提起しています。

「積極的な財政政策と穏健な金融政策を引き続き実施する。経済回復のための必要な支持の強度を保持し、政策運営において、ピンポイントに有効性を高めていく。急いで曲がることはせず、政策の時効性をしっかり把握すべきだ」

 私が注目したのは「急いで曲がることはしない」(中国語で「不急転弯」の部分)です。今年、新型コロナの経済への影響を最小限にとどめるべく、中国政府も他国政府同様、相当程度の金融緩和と財政出動に踏み切りました。

「曲がる」というのは、非常事態にあった今年を貫通したこの政策を拙速に変更することはせず、徐々に元の基準(積極的な財政政策と穏健な金融政策)に戻していく、という意味です。

 2021年、政府の金融緩和と財政出動への積極性は低下するでしょうが、そのプロセスは、景気の実態を見ながら、徐々に、慎重に下げていくということ。景気が予想より悪くなれば、金融緩和や財政出動を通じて下支えする用意と柔軟性を備えているということです。

(3)国家戦略「内需拡大」のための供給側「構造改革」+需要側「管理」

 中国政府は近年、「供給側構造改革」と題して、サプライサイドの改革を経済の持続可能な発展を実現していくための処方箋としてきました。例えば、企業向けの減税やコスト削減、規制緩和、過剰生産能力の解消、債務削減などがそこには含まれます。

 会議で特筆すべき、新たに出てきた言い回しが、「供給側構造改革を主線にしつつも、需要側管理に注力する」というもの。そのために、「生産、分配、流通、消費といった各分野を通じて、需要が供給をけん引し、供給が需要を創造するハイレベルな動態バランスを形成し、国民経済システム全体の効能を向上させる」としています。

 新型コロナや米国との戦略的競争という新たな常態(ニューノーマル)を受けて、「国内大循環」という新たな概念を使って内需重視の新たな国家戦略を掲げた習近平政権が、需要を促すために最大限に重視する要素が「雇用」です。

 中国政府は、2020年、すでに都市部で新たに創出する雇用1,100万人の目標を達成したと高らかに宣言しています。中国において、雇用は国民の間でも最も敏感かつ神経質に認識、議論される経済指標の一つです。

 雇用が安定的に創出されなければ、国民が積極的に消費する局面は生まれません。社会不安も広がります。そして、雇用創出には経済成長が必要であり、(2)で述べた、政策ツールは柔軟に使っていくということです。