景気下振れ圧力は小さい

(1)景気の下振れ圧力は小さい

 会議では、近年、共産党指導部が重要会議で提起することが多かった「経済下行圧力」(経済下振れ圧力)、「穏増長」(安定成長)という類の文言が見られませんでした。要するに、経済成長率が低迷するという近年の懸念が、2021年においては存在しないということです。

 最大の理由は言うまでもなく新型コロナです。これによって、2020年の経済成長率は明らかに鈍化し、その反動として、2021年度の成長率が跳ね上がるためです。2021年度の中国経済成長率に関して、IMF(国際通貨基金)は+8.2%、世界銀行は+7.9%と予測しています。

 私が中国共産党・政府で経済政策を担当する官僚や政府系学者と議論をする限り、+8%は固いというのが主流な見方のようです。と同時に、「2020年、2021年セットで+5%前後の成長率が見込めれば、中国経済のマクロ面は安定的に推移している」(国家発展改革委員会幹部)という認識のようです。

 私もこの見方が有益だと考えます。つまり、2020、2021年をセットで眺め、今年は下がった、来年は上がったと一喜一憂するのではなく、この2年間がトータルでどうだったかで、中国経済の良しあしを判断すること。

 そして、本当の勝負は2022年度。習近平共産党総書記が続投するのか否か、どんな「新人」が指導部入りするのかが明らかになる党の第20回大会が秋に開かれるこの年に、中国経済が引き続き「5%前後」の成長率を実現できるかということ、が重要だと考えます。

 私自身は、これから中国が直面していく「政治の季節」という要素を考慮したうえで(前々回レポート:「世界経済の勝者は誰か?最重要イベントをめぐる2021年の中国情勢10大予測」ご参照)、2020年から2022年の3年間を一つのまとまりとして捉えるようにしています。

 会議は、2020年の経済情勢の総括として、「我が国は、主要経済体のなかで唯一プラス成長を実現する国になった」と評価しています。コロナ抑制と経済再生の両立と共存を、ある程度うまく回せた、乗り切ったというのが党指導部の判断なのだと解釈できます。