ドル建て商品と円建て商品とで、パフォーマンスに差が生じた2020年

 長期投資を前提にした場合、金関連商品は、最低投資額が比較的少額であることについて書きました。ここからは、具体的に銘柄を選ぶ際の、留意点を書きます。一口に“金(ゴールド)”といっても、ある条件が加わると、“イメージ”と“値動き”が異なるケースが発生するためです。

 以下は、世界の金(ゴールド)価格の指標の一つであるニューヨークの金先物(以下NY金先物)価格と、それに追随する傾向があり、日本の金価格の指標の一つでもある大阪の金先物価格の推移を示しています。どちらも、金(ゴールド)ですが、価格の山・谷に、強弱の差が生じていることが分かります。

図:NY金先物と大阪金先物価格の推移(ともに中心限月)(2020年1月6日を100として指数化)

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 山と谷が到来するタイミングはほぼ同じであるものの、変動時の“程度”が異なるため、同一の値動きになっていません。同じ金(ゴールド)なのですが、なぜ変動時の程度が異なるのでしょうか。

 ドル建て金とそれに追随する円建て金の間に、“ドル/円”が存在し、そのドル/円の変動が、2つの金の変動時の程度を異なるものにしています。

 ざっくり言えば、ドル/円がドル安・円高に振れるとき、ドル建て金は円建て金よりも上昇しやすく(=円建て金はドル建て金よりも下落しやすく)なります。また、ドル/円がドル高・円安に振れるとき、ドル建て金は円建て金よりも下落しやすく(=円建て金はドル建て金よりも上昇しやすく)なります。

 グラフのとおり、2020年は日を追うごとに、ドル建て金が円建て金よりも強くなっていきました。これは、ドル/円がトレンドを伴ってドル安・円高方向に推移したためです。

 米国での新型コロナ感染拡大、米国の大規模な金融緩和、米国の大規模な財政出動など、ドルが弱くなる要素が散見されました。このような材料によって、年初は1ドル108円前後だったドル/円は、徐々にドル安/円高が進行し、12月下旬は1ドル103円台となりました。

 もちろん日本も、金融緩和は行っていますし、大規模な財政出動も行っていますし、新型コロナの感染拡大も起きています。それでもドル/円が、ドル安・円高に振れるのは、日本よりも米国の方が、これらの要素の規模が大きいためとみられます。

 ドル/円にトレンドが出ている場合は、金(ゴールド)投資においても一定の留意が必要です。2020年のように、ドル安・円高が進行している時、保有している金(ゴールド)が円建てであれば、“世界の指標であるドル建てに比べて”、上昇が弱い、あるいは逆に下落する、などの事象が発生し得るためです。