景気回復を織り込む株高

 日経平均は、景気循環に応じて、上がったり下がったりします。景気が悪化する少し前から下げ始め、景気が底打ちすると上昇に転じるサイクルがあります。以下のグラフをご覧ください。

景気循環と日経平均(月次推移):2007年1月~2020年11月13日

出所:景気後退期は内閣府、景気停滞期は「景気後退ぎりぎりまで悪化」したものの景気後退の定義を満たさなかったところ、楽天証券経済研究所の判断

 ここで注目していただきたいのは、最後(グラフ一番右)の景気後退です。内閣府はすでに、2018年10月以降、景気後退期に入っていると、正式に認定しています。コロナ・ショックが起こる1年以上前から、米中貿易戦争の影響で世界的に製造業の景況が悪化し、景気後退期入りしていたことがわかります。そこに、コロナ・ショックが追い打ちをかけた形です。

 ただ、私はこの景気後退はすでに終わっていると判断しています。2020年4~6月が最悪期で、7月から回復が始まり、7月・8月・9月・10月・11月と、景気回復が始まってから5カ月目に入っていると考えています。したがって、今の株高は、不況下の株高ではなく、景気回復を織り込む株高とみています。

 今とよく似た環境で、世界的に株が上昇したのが2016年後半でした。上のグラフで赤い大きな矢印をつけた所です。2016年前半は、「チャイナショック・資源安ショック」と呼ばれる世界的な景気悪化局面で、世界的に株が下がっていました。2016年6月には、英国が国民投票でEU(欧州連合)からの離脱を可決し、世界景気に悪影響を及ぼすことが不安視されました。さらに、当時も米大統領選が行われていましたが、過激発言を繰り返す、トランプ氏が当選すると株は暴落すると言われ、政治不安が株の上値を抑えていました。

 後から振り返ると、2016年後半は、世界景気の回復局面でした。景気回復を織り込んで、世界的に株が急反発した局面でした。ところが、当時はまだ景気が回復に向かっていることがわからず、不況下の株高と言われていました。後から振り返ると、景気回復を織り込む株高でした。

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