※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「[動画で解説]バイデン・ワクチン期待で日経平均続伸。
世界景気回復の期待高まる」

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日経平均急騰、29年ぶりの高値更新

 先週の日経平均株価は、1週間で1,060円(4.4%)上昇し、2万5,385円となりました。先々週に続き、29年ぶりの高値をさらに更新しました。

 米大統領選でバイデン氏の勝利がほぼ確定、国際協調を目指すと表明したことから、米中対立が激化する不安がやや低下しました。さらに9日、米ファイザーが開発中の新型コロナワクチン(m-RNAワクチン)の有効性が90%に達したと発表したことから、ワクチンにより来年にもコロナ問題が収束に向かう期待が高まりました。

 バイデン・ワクチン期待によって、来年にかけて世界景気が回復する期待が高まって米国株が上昇し、日本株にも外国人と見られる買いが増えました。

 また、発表中の9月中間決算で、トヨタ・ホンダ・ソニー・任天堂・ファナック・村田製作所など、今期業績見通し(会社予想)の上方修正が増えたことも、追い風となりました。

日経平均週足:2019年10月1日~2020年11月13日

 日経平均の過去1年の動きを簡単に振り返ります。

【1】2019年10~12月:米中通商協議の合意期待で上昇
【2】2020年1~3月:コロナ・ショックで暴落
【3】2020年4~6月:世界中で巨額の金融・財政政策発動。株が急反発
【4】2020年7~10月:経済再開で景気底打ち
【5】2020年11月:米大統領選でバイデン勝利、ワクチン開発進展を好感し高値更新

景気回復を織り込む株高

 日経平均は、景気循環に応じて、上がったり下がったりします。景気が悪化する少し前から下げ始め、景気が底打ちすると上昇に転じるサイクルがあります。以下のグラフをご覧ください。

景気循環と日経平均(月次推移):2007年1月~2020年11月13日

出所:景気後退期は内閣府、景気停滞期は「景気後退ぎりぎりまで悪化」したものの景気後退の定義を満たさなかったところ、楽天証券経済研究所の判断

 ここで注目していただきたいのは、最後(グラフ一番右)の景気後退です。内閣府はすでに、2018年10月以降、景気後退期に入っていると、正式に認定しています。コロナ・ショックが起こる1年以上前から、米中貿易戦争の影響で世界的に製造業の景況が悪化し、景気後退期入りしていたことがわかります。そこに、コロナ・ショックが追い打ちをかけた形です。

 ただ、私はこの景気後退はすでに終わっていると判断しています。2020年4~6月が最悪期で、7月から回復が始まり、7月・8月・9月・10月・11月と、景気回復が始まってから5カ月目に入っていると考えています。したがって、今の株高は、不況下の株高ではなく、景気回復を織り込む株高とみています。

 今とよく似た環境で、世界的に株が上昇したのが2016年後半でした。上のグラフで赤い大きな矢印をつけた所です。2016年前半は、「チャイナショック・資源安ショック」と呼ばれる世界的な景気悪化局面で、世界的に株が下がっていました。2016年6月には、英国が国民投票でEU(欧州連合)からの離脱を可決し、世界景気に悪影響を及ぼすことが不安視されました。さらに、当時も米大統領選が行われていましたが、過激発言を繰り返す、トランプ氏が当選すると株は暴落すると言われ、政治不安が株の上値を抑えていました。

 後から振り返ると、2016年後半は、世界景気の回復局面でした。景気回復を織り込んで、世界的に株が急反発した局面でした。ところが、当時はまだ景気が回復に向かっていることがわからず、不況下の株高と言われていました。後から振り返ると、景気回復を織り込む株高でした。

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