不確かな世界でも、最も理にかなう投資哲学はトレンドフォローだ!

 相場には方向性を持っている「トレンド相場」と、無秩序に動いている「ランダム相場」がある。現在の相場が「トレンド相場」なのか、あるいは「ランダム相場」なのかを見定めるのに有効な指標は「標準偏差ボラティリティ(Standard Deviation)」と「ADX(Average Directional Index)」である。

「標準偏差ボラティリティトレードモデル」では、相場に方向性が出てくると、標準偏差ボラティリティとADX(アベレージ・ディレクショナル・インデックス)が上昇する。標準偏差ボラティリティとADXが低い位置から一緒に上昇する場合は、相場が保ち合いを離れ、強い方向性をもつシグナルとなる。

ポンド/ドル(日足)「標準偏差ボラティリティトレードモデル」

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
下段:標準偏差(26)水色のライン・ADX(14)黄色のライン
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 相場に大きなトレンドが発生する可能性のある局面は、標準偏差ボラティリティが上昇し、ボリンジャーバンドの±1シグマをブレイクしたときである。相場がボリンジャーバンドの±1シグマの外側にあるうちはトレンド相場が継続しており、ポジションを持ち続けると大きなトレンドをとらえることができる。

 一方、標準偏差ボラティリティとADXがピークアウト(天井をつけ下落)すると、トレンド期とはやや逆方向にバイアスがかかった「横ばいレンジ内での乱高下相場」となりやすい。

 下のユーロ/ドルの日足チャートを見ていただきたい。

 標準偏差ボラティリティとADXがピークアウトするポイントが、レンジ取引(アウトオブザマネーの行使価格のコールとプットを両方売るオプション戦略・相場が大きなレンジに収まっていれば収益が上がる戦略)の仕掛け場である。

ユーロ/ドル(日足)「標準偏差ボラティリティトレードモデル」

上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
下段:標準偏差(26)水色のライン・ADX(14)黄色のライン
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 最近、「標準偏差ボラティリティとADXの位置が低いから、相場はレンジ相場になる」という、【誤った解釈】をしている人をみかけるが、標準偏差ボラティリティとADXが低い位置にあるときは、「次のトレンド待ち」の時期であって、レンジ取引の仕掛け場ではない。

 相場で大きな収益機会になりやすいのは、標準偏差ボラティリティとADXが低い位置から一緒に上がっていく局面で、これを相場用語では「保ち合い放れ」・「レンジ・ブレイク」・「ボラティリティ・ブレイクアウト」などと呼んでいる。

 ワイルダーが考案したADXはDI(方向性指数)の平均(アベレージ)で、価格の変動幅を指数化してトレンドの強弱を指数化したものだ。これまで一般的なADXと波形が違うという質問を山ほど受けてきたが、筆者はワイルダーのオリジナルADX、すなわち、ADXを電卓で計算する簡易法である<修正平均ADX>を使っている。標準偏差ボラティリティとADXの2つの指標が低い位置から一緒に上昇している時は、相場が保ちあいを離れ強いトレンドが発生したという判断になる。

 よく誤解されるが、標準偏差ボラティリティとADXはトレンドの強弱を表す指標であり、相場が上昇しているのか、下落しているのかを示す指標ではない。