バークシャー・ハサウェイの株主の皆様へ

 バークシャーはGAAP基準-Generally Accepted Accounting Principles「米国会計基準」-に則り814億ドルの純利益を2019年に計上しました。この利益には240億ドルの営業利益、37億ドルの有価証券売却によるキャピタルゲイン、及び当社が保有する有価証券のネット未実現キャピタルゲイン増加に伴う評価益537億ドルが含まれています。これらの利益は全て税後で表記されています。

 上記537億ドルの評価益についてはコメントが必要です。これは2018年から新たに導入されたGAAPルールによるもので、有価証券を保有している会社に、保有銘柄に関わる未実現損益の増減額を利益に含めることを求めています。昨年度のレターにおいて強調した通り、バークシャーを経営する私のパートナーであるチャーリー・マンガーも、私もこのルールに賛成していません。

 会計士による当該ルールの導入は、むしろ象徴的な考え方の変化でありました。2018年以前、GAAPでは株式売買を主業とする会社を除いて、ポートフォリオ銘柄の未実現利益は利益計算に含まれることは決してなく、未実現損失は「一時的でない」場合のみ利益計算に含まれることになっていました。現在、当社は四半期毎の最終損益(多くの投資家、アナリスト、コメンテーターが見る重要項目)に、どれだけ気まぐれであろうと、保有株式の上昇・下落の影響を含めなければ(尊ばなければ)なりません。

 当社の2018・2019年は、新ルールに関する我々の主張を明白に表すものであります。株式市場が下落した2018年には当社ネット未実現利益は206億ドル減少し、GAAP利益は40億ドルのみとなりました。2019年には株式市場が上昇したため、ネット未実現利益が前述の通り537億ドル増加し、GAAP利益がこのレター冒頭で述べた814億ドルにまで押し上げられました。この様な相場の乱高下がGAAP利益を1,900%増加させるクレイジーな結果をもたらしたのです!

 その一方で、おとぎ話的な会計ではなく我々が認識している現実世界では、当社の保有株式額はこの2年間平均で2,000億ドル程度あり、それら株式の本源的価値は、同期間中に着実かつ著しく成長しています。

 チャーリーと私は、貴方に営業利益に注目し(2019年では少ししか変わっていない)、実現・未実現を問わず、四半期及び通年の投資損益は無視することを勧めます。

 しかし、それだからといって、当社にとってこれら投資先の重要性が低下するということでは決してありません。予測不能で極めて不規則な形であったとしても、これら保有株式群は長い時間をかけて当社にばく大な利益をもたらしてくれるものと、チャーリーと私は期待しています。なぜ我々が楽観的なのか、次の議論へ移りましょう。