需要が消滅。リーマン・ショック、同時多発テロ後と似ている

 今回のコロナショックは、通常の景気悪化と様相が異なります。製造業だけでなく、小売り・サービス産業にも大きなダメージが及んでいます。通常、景気悪化に強いといわれているディフェンシブ産業が大きなダメージを受けています。

 今、瞬間的に日本中で「需要消滅」が起こり、日本の小売り・サービス産業に大きなダメージを及ぼしています。「これからの2週間が感染拡大を食い止める正念場」との政府呼びかけに応じ、日本中でイベント・旅行・会合・出張・旅行が次々と中止となりました。3月2日から春休みまで多くの小・中・高校が臨時休校となります。また、在宅勤務を増やす企業が増えています。

 日本中で、外出を控える人が増え、人の行き来が減り、繁華街や小売り・外食店舗はいつもより閑散としています。交通渋滞も減っています。「需要消滅」によって、小売・サービス業の売り上げが大きく落ち込むのは確実です。

 中国で工場が停止しているために、中国の製造業とサプライチェーンでつながった日本の製造業にダメージが及ぶことは早くから分かっていました。中国の景気が悪化すると、製造業がダメージを受けるのは、いつものことです。ところが、今回は通常は不況に強いサービス産業が世界的にダメージを受けています。それがコロナショックの特色となっています。

 このように「需要消滅・生産停止」が同時発生するのは珍しいことですが、過去にも例があります。それは、2008年9月15日に米リーマン・ブラザーズが破綻した後です。リーマン・ショックと言われる世界不況の中で、世界中で、需要が一時的に消滅し、生産が停止しました。

 ごく短期間ですが、2001年9月11日、米国で「同時多発テロ」が起こった直後も、米国でテロへの恐怖から外出する人が消えて、一時的に需要が消滅しました。この時、米国はITバブル崩壊不況の最中です。「ITバブル崩壊に、同時多発テロが追い打ちをかけ、米経済は恐慌入りする」と言われました。

 ところが、需要凍結は一週間で終わりました。2週間目からは、「テロに負けない」キャンペーンが全米でわき起こり、2001年のクリスマス商戦は大いに盛り上がり、米景気は不況を脱しました。