米中対立激化の行方

 第2位と第3位は米中対立を挙げています。ブレマー氏は「デカップリング(切り離し)」は、「中国がハイテク分野で優位に立つのを阻止するため、米国が米国経済の対中依存度を下げるという考え方だ。経済のグローバリゼーションに逆行し、ソ連の崩壊以来、最も影響の大きい地政学的な展開だ」と説明しています。そして「今後、新たな『ベルリンの壁』がどこにできるのか、言い換えれば、各国が米中どちらにつくのかが注目される」と述べています。

 また、米中関係では「香港や南シナ海問題、台湾情勢、ウイグル族の弾圧の問題など、中国の核心的利益に関わる分野で米中の衝突が予想される」とし、「貿易分野で関税を武器に報復合戦が続いてきたが、さらに緊張が高まる恐れがあるだろう」と分析しています。

 1月15日の第1段階の合意署名によって、米中貿易問題は一時休戦となりそうです。トランプ大統領も第2段階の交渉は大統領選挙後だと示唆しているため、休戦は続きそうです。

 しかし、ブレマー氏は、貿易問題以外で米中関係の緊張が高まると分析し、米中のハイテク覇権争いは続き、米中による各国の囲い込みは激化し、中国の革新的利益で衝突が予想されるとしています。米国大統領選挙の過程でトランプ大統領が苦戦を強いられると、「人権・民主主義・安全保障」などの中国の革新的利益に対し、強硬姿勢で臨んでくることは容易に想像できます。

 どうやら、一時休戦は束の間になるかもしれません。

 米中関係改善期待で、ドル/円は110円台に乗せましたが、持続しないかもしれません。関税合戦以外で米中対立が激化すると、昨年に何度も見られたような株安や円高の場面が今年も起こるかもしれません。今年も不透明感は払拭されず、世界貿易の伸びは鈍化し、企業の投資は慎重になる可能性がありそうです。