米国大統領選が最大のリスク

 参考までに「2019年の世界10大リスク」も併記しました。昨年のリスクと対比することによって、リスクが内在する地域・国の変化や比重を読み取ることができます。

図:ユーラシア・グループの世界10大リスク

 2019年の第1位は悪い種(Bad Seeds)でした。さまざまな悪い兆候が出てくるが、同盟国の弱体化で対応ができないだろうという意味合いでした。2019年の最も悪い種は、第2位の「米中関係」が関税の報復合戦によって鮮明化したことです。特に昨年後半から相場を動かす大きな要因となりました。

 そして、昨年第5位に挙げた米国内政問題は、2020年では「誰が米国を統治するか?(Who Governs the US? )」というリスクとして第1位に挙げています。米国大統領選挙を国際政治の今年の最大のリスクと分析しています

 ブレマー氏は、「誰が大統領になっても米国民の少なくとも半数近くが大統領選の結果を受け入れない可能性が高く、敗者の党からだけでなく勝者からも法廷闘争に持ち込む可能性が高い」と分析。「ブッシュ対ゴアの2000年大統領選では、フロリダ州の集計やり直し問題が法廷闘争に発展したものの、共和、民主両党とも最後は連邦最高裁判所の決定を受け、手続きをへて選ばれた大統領の正当性を認める善意があった。だが、分断が進んだ現在の米国社会ではその善意は見当たらず、その結果がどうであれ法廷闘争が長引きそうである」とかなり悲観的な見方をしています。そしてこの政治的な空白は外交政策を不安定にさせ、米国の同盟国にも大きな影響を与えるだろうと説明しています。

 米国の社会の分断は2019年も見られていましたが、2020年は大統領選をきっかけに法廷合戦になり、社会がより鮮明に分断され、これが長引くとの説明には少し驚きました。

 ブッシュ対ゴアの法廷闘争が決着したのは12月でした。大統領選挙の投票日から2カ月以上たって、国民が納得する大統領が選ばれました。

 果たして今年2020年はどうなるのでしょうか。翌年1月20日に予定されている大統領就任式の日にも法廷闘争は続いているのでしょうか。もし、ここでも決着していなければ前代未聞の出来事です。世界中がTVやネットで見ている大統領就任式が「米国社会分断の式典」になるかもしれません。

 そのとき、相場にどのような影響を与えるのでしょうか。直接的に影響を与えるというよりもジワジワと効いてきそうな感じがします。社会の分断は、経済にも悪影響を及ぼしてくる可能性がありそうです。