部分合意:最悪シナリオ

 米中で部分合意の前提となっている事項について、重大な「認識の相違」があることがわかり、部分合意の署名が延期されれば、ネガティブ・サプライズ(悪い驚き)となります。ただし、「軽微な認識のズレ」から、署名が短期的に延期されるだけなら、あまり問題とならないかもしれません。

 それでは次に、最悪ではないものの「ネガティブ」なシナリオについて、考えます。部分合意が署名されても、それだけで終わってしまうならばネガティブです。部分合意が単なる儀式に過ぎず、対立を緩和させる具体策が何もなければ、市場は失望するでしょう。

 部分合意は、「第1段階の合意」とも呼ばれています。合意が難しい懸案事項はすべて先送りしたままで、米中の懸案事項は山積しています。第1段階の合意が成立するとともに、「第2段階の合意」に向けて、新たな交渉が始まる見込みです。そこでは、合意が到底望めない難しい交渉も入ってくるでしょう。

 中国が、巨額の補助金を使って世界の成長分野で一気にシェアを取る「国家資本主義」は、米国が是正を強く要求しているところです。しかし、中国政府にとって、ここは一歩も譲れない部分。中国「国家資本主義」の根幹をなす国策だからです。補助金をめぐる米中対立の構造は、今後、5年10年たっても、変わらないと考えられます。

 その他、米中の覇権争いにからむ懸案事項は多岐にわたるため、「第2段階の合意」に向けた交渉が難航するのは必至です。

 第1段階の合意が成立した時点で、さらなる関税の引き下げが無く、第2段階の交渉が難航し、米中両国で通商交渉への不協和音が高まることが、現在、想定される「かなりネガティブ」なシナリオです。

 今晩から明日にかけて、米中部分合意についてどのような発表があるか、ポジティブ・サプライズもネガティブ・サプライズもあり得るので、目が離せません。

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