今日にも部分合意?最善&最悪シナリオ

 米中通商交渉で「部分合意」する方針は、昨年12月13日に決まりました。ただし、両国首脳が署名して実際に発効するのは、1月半ばとなる見込みでした。トランプ大統領は、1月15日をメドとすると述べていました。今日にも、合意が署名される可能性があります。

 ただし、部分合意は言い換えると、「合意できない難しい問題はすべて先送りし、合意可能な狭い範囲に絞った合意」です。部分合意の方針が決定したことで、昨年12月15日に予定されていた米国による「対中制裁関税第4弾」は発動が見送られました。ただ、それだけで終わるなら、部分合意が署名されても、ただの儀礼にしか過ぎません。

 部分合意をきっかけに、さらなる対立緩和があるか否かが重要です。想定される最善&最悪シナリオは、以下の通りです。

部分合意:最善シナリオ

 部分合意に米中首脳が署名し、正式に発効するとともに、米中が互いにかけた制裁関税の想定以上に大きな解除(あるいは関税率引き下げ)を発表すれば、株式市場にとってポジティブ・サプライズ(良い驚き)となります。

 14日に米国が中国を「為替操作国」の指定から外したことは、好感できます。これが、対中関税引き下げの「前準備」ともとれるからです。トランプ大統領は12月に、部分合意が成立すれば、対中関税の関税率引き下げを検討すると述べていました。いよいよその実現が近づいているとの期待もあります。

 中国サイドでも、米国からの輸入品にかけている関税の引き下げを進める見込みです。冷凍豚肉など米国からの農産物の輸入関税が下がっていくことが期待されています。

 中国にとって、米国農産物の輸入関税引き下げは、ホンネでやりたいことと考えられます。米国産に関税をかけてから、中国国内で豚肉市況などが高騰しているからです。このまま食品価格の高騰を放置すると、中国人民の不満が高まります。米国に恩を売りながら、米国からの農産物の輸入関税を引き下げることに、中国政府は前向きなはずです。

 このように、部分合意をきっかけに、米中が互いに制裁関税を部分的に解除し、米中貿易が回復に向かう期待が出ることが、現時点で想定する「最善シナリオ」です。