目先、原油相場は要人の減産延長を示唆する発言で短期的に60ドルを試すか?

 2017年1月にはじまった減産は、もうすぐ4年目に突入します。

 市場では、減産が行われていて当たり前、米国の原油生産量が減少しない以上、需給バランスが緩まないようにOPECプラスが減産をし続けなくてはならない、減産をやめられたら原油価格が急落し、原油価格とともに株価も急落した2014年半ばから2016年にかけて発生した原油価格の急落・低迷(いわゆる逆オイルショック)が再び起きかねない、というムードが漂っていると筆者は感じています。

 終わってしまっては困るものの一つに、“日銀のETF買い”があります。日銀がETF(上場投資信託)を購入し続け、株価が支えられていることが常態化しています。これと同様、OPECが減産で原油市場を支えていることが常態化し、終わってしまっては困るものの一つになっています。

 ただ、これらは相場を支えているのであり、株価や原油価格を上昇させているわけではありません。つまり、相場を上昇させておかしくない、人為的な上昇要因がある中で、相場が明確な上昇トレンドを描かないのは、それらを相殺する下落要因があるためです。

 とはいえ、上昇しなくとも、日銀が買ってくれているから株価が急落することはないだろう、OPECプラスが減産をしてくれているから原油相場は急落することはないだろう、など、日銀やOPECというある程度市場が一目を置く組織が市場に安心感を与えているわけです。

 逆に、日銀やOPECは、“市場の期待に応えて”、ETFを買ったり減産を継続したりしている面もあるのかもしれません。

 日銀においては、ETFを買い続けるためにはお金を出し続けることが必要ですが、OPECが減産を続けるためには何が必要なのでしょうか。それは、減産によって人為的に供給量を削減させ、得られたはずの外貨を放棄し続けること、そして減産を行う組織の堅牢性を維持することだと思います。

 減産の期間が長くなればなるほど、減産を実施している国に財政的な負荷がかかる期間が長くなります。また、財政的に負荷がかかる期間が長くなればなるほど、早く減産をやめたいと思う国が現れたり、減産の合意内容を破ってヤミ増産をする国が出たり、エクアドルのように自国都合で脱退する国が出るなど、足並みが乱れやすくなって組織の堅牢性を維持することが難しくなります。

 とは言え、原油価格の上昇は産油国すべての総意、そして原油価格が急落しないことは株式や通貨など他の市場の市場参加者の総意と言えます。つまり、全体的には、減産延長は延長する・しない(意思の有無)、延長できる・できない(可能・不可能)、という議論ではなく、実施しなければならないからどうやって延長すればよいのか? という、延長することを前提とした延長の方法論が議論されるととらえるべきだと筆者は考えています。

 このため、複数の伏線を張って、会合に向けて水面下で調整を進めていると考えられます。

 12月5日の第177回OPEC総会と翌6日の第7回OPEC・非OPEC閣僚会議の両会合について、筆者が考えるメインシナリオは、以下の通りです。

・ブラジルが非OPEC国としてOPECブラスに入る(OPECには加盟しない)
・エクアドルがOPECを脱退する(OPECプラスから離脱する)
・2020年4月以降の減産の方針決定は見送る(駆け込み増産を行う時間的猶予を作る)
・2020年2月下旬から3月中に臨時総会を行うことを決定する(第178回OPEC総会と第8回OPEC・非OPEC閣僚会議)
・減産延長や強化を示唆する発言をふんだんに盛り込む(臨時総会に期待を持たせる)

 まずは目先、米中貿易戦争による消費減少懸念に押されながらも12月5、6日の会合に向けて、減産延長やブラジルのOPECプラスへの参加を含んだ減産強化などについて、要人が小出しに発言することが予想され、そのたびに市場は、減産が終わらずに済む、原油市場だけでなく株式市場も混乱せずに済む、OPECプラスは期待に応えて減産を継続してくれる、など、前向きにそれらの発言を受け止め、原油価格は反発すると考えられます。

 上下を繰り返しながらも原油相場は、まずは、節目である60ドルを目指す展開になると筆者は考えています。