「怖くない原油高」との違いとは?
原油相場が騰勢を強めています。WTI原油先物はおよそ5カ月半ぶりとなる1バレルあたり80ドル台後半、東京のドバイ原油先物は1キロリットルあたり8万円近辺で推移しています。
※WTI原油は、米国のテキサス州など主要な産油地で生産される原油の総称。ウェスト・テキサス・インターミディエート。
一口に原油高といっても、西側の先進国にとっては二つの意味があります。
図:西側先進国における怖い原油高と怖くない原油高
一つ目の意味は、旺盛な需要が存在することを暗示する好景気の証であり、株高が同時進行していることで納得感が強まる「怖くない原油高」です。原油相場を経済指標の一つとして考えている市場関係者に支持されやすい意味です。(図の右半分)
こうした市場関係者との会話において、何らかの理由を示した上で原油価格が下がるのではないかと述べると、少なくない確率で「景気が悪化すると考えているのか?」と質問が返ってきます。景気が悪くなる話をするな!と、お叱りを受けたことさえあります。原油相場をそれだけ、経済指標の一つとして重視しておられたのだと思います。
二つ目の意味は、インフレが継続していることを示唆し、中央銀行による利下げを困難にして景気回復を遅らせたり、運送や電力コストなど活動の基盤となるコストを上昇させて経済的負担を増やしたりする「怖い原油高」です。多重苦を同時発生させる大変に怖い原油高です。(図の左半分)
先週、短期的に株安・原油高が目立った時間帯があったことを考えると、足元の原油高は「怖い原油高」だと言えます。利下げを困難にしたり、経済的負荷を増やしたりする(しかもこれらを同時発生させる)原油高はなぜ起きているのでしょうか。そしてそれは今後どのようになるのでしょうか。