世界の中央銀行が保有する金残高は?

 金を保有する機関に、中央銀行があげられます。中央銀行は、日本で言えば日本銀行、米国であればFRB(米連邦準備制度理事会)にあたり、その国の“銀行の銀行”などとよばれ、金利を調節し、物価や雇用情勢を安定化させる役割を担っています。

 その中央銀行は、外貨準備高とよばれる、即座に利用できる対外資産を保有しています。他国への債務の返済、急激な為替相場の変動の抑制などに用いられます。簡単に言えば、非常事態のために備えておく、すぐに使えるお金ということです。

 中央銀行は外貨準備高の一部に金(ゴールド)を組み入れています。以下は、世界の中央銀行が保有する金の残高の推移です。

図:世界の中央銀行の金保有高(合計)

 

単位:トン
出所:WGC(World Gold Council)のデータをもとに筆者作成

 2000年から2007年ごろにかけて、残高は減少しましたが、2009年ごろから増加してきています。増加の背景には、リーマン・ショック後の景気後退期に行われた世界的な金融緩和や欧州の信用不安、アラブの春などのさまざまな地政学的リスクの発生、などがあげられます。

 近年は、中国、ロシア、トルコなどの新興国の中央銀行の金保有高が増加傾向にあります。世界全体および自国が抱えるさまざまな懸念が拡大することへ備えるために金を保有する、制裁や貿易戦争などで相対する米国の資産(例えば米国債)を保有する代わりに金を保有する、などの動きがみられます。

 中央銀行の金保有の動向は、数週間や数カ月単位ではなく、数年単位の変動となる傾向にあるため、どちらかと言えば中央銀行の金保有高の増加は、長期的な金相場の上昇要因と言え、2019年の金価格の値動きに対しては、根強い下支え要因として作用していると考えられます。