やっかいなリスクの「複合化」

 前ページの図に示したいろいろなリスクは、お互いに独立している場合もありますが、それはむしろ例外です。多くの場合、一つのリスクは玉突き的に次のリスクを誘発し、それがまた次のリスクを招来するということが起きます。そうやって複合的で複雑なリスクに化けてしまうわけです。

 2008年のリーマン・ショックを例にとれば、住宅ローン証券化商品の価格が下落(=市場リスク)したとたん、その証券に対する買い手がいなくなってしまい、流動性が失われました(=流動性リスク)。

 すると、流動性のなくなったそれらの証券化商品を抱えた金融機関に対して信用不安が出て(=カウンター・パーティー・リスク)、金融機関同士の取引が停滞する事態が生じたのです。

 このように個々のリスクの連鎖的な発生が金融システム全体を巻き込んだ問題に発展するリスクのことを「システミック・リスク」といい、それは金融システム全体が機能不全に陥る状態を指します。