財政検証の暗黙の大前提は「賃金の増加」。だけど・・・

 高齢者が増加していく下で一人当たりの年金支給額を維持するには、保険料収入の増加が欠かせません。厚生年金保険料額は賃金に比例した等級になっているので(保険料率18.3%)、一人当たりの賃金が増えれば、年金財政の収入が増えます。

 高齢者の生活水準を維持するには、年金支給額を物価上昇率に応じて増やす必要があるので、望ましい年金制度を維持するには、名目賃金が増加するだけではなく、実質賃金の増加が必須です。

 財政検証では6つのケースで試算していますが、どのケースも単年度で見ても実質賃金の増加を前提としているのはそうした事情からでしょう。

▼財政検証における2028年までの経済前提

出所:厚生労働省「2019年(令和元年)財政検証結果」より転載

▼財政検証における2029年以降の経済前提

出所:厚生労働省「2019年(令和元年)財政検証結果」より転載