大間違いその5:高い手数料の投信を買う

 大袈裟に「基本原理」というほどのものではないが、運用商品のリターンは図3のように分解できる。例えば、「国内株式」に投資する投信の場合、株式市場のリターンは「共通」、運用スキルによるアクティブリターンは「事前には評価不能」、で実質的な手数料の差が「確実な差」になる。

 すなわち、運用商品を評価する場合、手数料の差こそが唯一重要で、投資家が自ら改善できるポイントなのだ。

 ちなみに、(不都合な真実その1)アクティブ運用の平均リターンはインデックス運用に劣る、(不都合な真実その2)相対的に良いリターンをもたらすアクティブ運用を事前に識別する方法はない、というアクティブ運用の2つの不都合な真実の論理的な帰結は、「(少なくとも手数料が高い限り)アクティブ運用の投信を買うことは経済合理的ではない」というものだ。

 人が自分の好みのお金を払う「個人的道楽」のレベルでアクティブファンドを買うことは止めないが、専門家としてアクティブファンドを他人にアドバイスする人間は不誠実である、というのが筆者の考えだ(金融界とFP[ファイナンシャル・プランナー]に友達が減るが仕方がない)。

(図3)

 個人投資家としては、株価が上がるか・下がるか、為替が円安か円高か、といった「市場リターンの予想」と「実質的手数料による運用商品評価」とを混同しないことが肝心だ。運用商品の評価は、市場リターンに対する評価と独立に行うことができる。

 立場を変えて考えると、手数料が割高な「不良商品」を販売するために、金融機関側は、顧客の注意を市場リターンや運用スキルに誘導することが重要なテクニックとなる。