「昭和」と「令和」、成長企業のビジネスモデルはどう変わる?

 20世紀と21世紀では、成長企業のビジネスモデルが異なります。平成の30年間(1989~2018年)は、20世紀から21世紀への橋渡しをする構造改革期となりました。

【1】20世紀は、いいモノを安価に大量生産する製造業が成長

 20世紀は、「モノ」の豊かさを求めて人類が努力した時代でした。生活を豊かにするモノを開発し、いち早く安価に大量生産する技術を獲得した製造業が成長しました。日本はその戦いに勝ち、20世紀の成長企業を多数生み出しました。

 日本の製造業がもっとも輝いていたのは、1983年の「ハイテク相場」の頃だったと思います。半導体、電機、自動車などで、日本が欧米企業を次々と凌駕していきました。この時代の株式投資では、いいモノを大量生産するハイテク産業が、成長のシンボルでした。

 ところが21世紀に入り、状況は変わりました。モノは人気が出て一時的に不足しても、すぐ大量供給されて、価格が急落するようになりました。

 中国、韓国、台湾などのアジア企業が、製造業で成長するビジネスモデルを壊してしまいました。欧米では、競争激化で産業全体に利益率が低下すると、生産を減らすのが普通です。ところがアジアの製造業は違います。全社が赤字になってもシェア競争を優先し、生産を減らさない企業がたくさん出ました。その結果、「製造業では利益を上げられない」というイメージが世界中に広がりました。

【2】21世紀は、いいサービスを安価に大量生産する企業が成長

 21世紀に入り、モノが慢性的に供給過剰になる中、深刻な供給不足に陥っているのが「良質なサービス」です。

 たとえば、共働き世帯に対する保育サービスは完全な供給不足です。保育に限らず、医療、介護、教育、防犯、警備、トラック運転士、熟練建設工など、良質なサービスが不足している分野は数え切れないほどたくさんあります。良質なサービスは、モノのように工場で大量生産することができないからです。供給を10倍にするためには、投入する人材を10倍にしなければならない分野が数多く残っているからです。

 供給が需要に追いついていないことから、サービス産業は、安定的に成長が続いています。ところが、この分野ではなかなか上場企業が現れにくいのも事実です。供給を10倍にするために、人材を10倍投入しなければならないサービス業は、上場企業となれません。そのため、いまだにサービス産業は無数の中小企業によって構成されている状況です。

 21世紀は、なんらかの仕組みを作り、良質なサービスの大量供給に成功する企業が成長企業となります。その代表がITサービス産業です。ネットを駆使することで、大量の人手をかけないでも、効率的に良質なサービスを生み出せるからです。

 小売業では、ネット販売に成功すると、全国に店舗展開しないでも全国企業として成長することができるようになりました。小売業だけでなく、銀行、証券などの金融業、旅行代理店、人材紹介、宣伝広報など、さまざまな分野で、ネットがリアルを代替する流れが続いています。少子化で、好不況にかかわらず慢性的に人が足りない時代に入り、この流れは変えられないと思います。

 良質なサービスを大量生産するための技術は、令和時代に入りさらに高度化する見込みです。AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット化)、SNS(社会的ネットワーク構築)・サービスロボットの発展で、これまで人間にしかできないと思われていた分野の作業が、人間を介せずにできるようになるでしょう。