欧州リスクにも注意

 欧州各国で、反EU(欧州連合)、反移民、自国中心主義を掲げる、極左・極右政党が勢力を拡大しています。すぐに重大な問題(EU崩壊)につながるとは思えませんが、テールリスク(可能性は低いが起こると重大な損失が発生するリスク)として意識しておく必要はあります。

【1】英国・リスク

 ブレグジット(英国のEU離脱)の条件について、英国とEUの交渉が暗礁に乗り上げています。英国メイ政権とEUが決めた離脱合意案は、英国議会で与党内の反対派から承認が得られそうになく、採決が見送られました。

 交渉期限は来年の3月で、4月から、離脱の移行期間に入ります。それまでに離脱条件について、英国とEUで合意が成立しないと、ハード・ブレグジット(合意なき離脱)となります。英国とEUの間の通商・経済連携にいきなり大きな障壁ができ、英国・EUともに大きなダメージを受けます。

【2】フランス・リスク

 経済改革を進めようとしていた中道派のマクロン・フランス大統領は、支持率が危機的水準まで低下しました。フランス全土に、「黄色いベスト運動」という反マクロン・デモが広がり、一部が暴徒化しています。フランスでも、反EUをかかげる左派が勢力を拡大しつつあります。

【3】イタリア・リスク

 イタリアでは、新興勢力の「五つ星運動」が選挙で首位をとり、排外主義を唱える「同盟」と連立政権を組みました。イタリアは財政赤字がEU基準に抵触しており、このままではEUから制裁を受ける可能性があります。反緊縮・反EUを掲げていた左派「五つ星運動」コンテ首相は、EUに配慮して、赤字を削減する緊縮を実施する方針ですが、それに国民の不満が高まっています。次の選挙では、「同盟」が首位にたち、反EUをさらに鮮明にするリスクもあります。

 同様に、スペイン・ギリシアなどでも反緊縮・反移民の機運が高まり、いつ、反EUにつながるか分からない状況です。

来年10月の消費増税後に、景気対策が一斉に発動される見込み

 来年の景気について、先週出た唯一のプラス材料は、消費税増後に、政府が何でもありの景気対策を発動する見込みとなったことです。「住宅・自動車減税」「キャッシュレス決済利用時のポイント還元」「防災のための公共投資」「保育無料化」などの景気対策が一斉に発動される見込みです。

 消費増税によるマイナス効果を、短期的には上回る景気対策となる可能性もあります。

 

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