ファーウェイ社をめぐる米中対立は、世界全体を巻き込む流れに

 米中貿易戦争が、単なる通商戦争ではなく、ハイテク覇権争いに発展し泥沼化していることを受け、来年の世界景気に悪影響が及ぶ懸念が出ています。5つの重大な懸念があります。

【1】米中通商交渉が難航する懸念

 トランプ政権は、「安全保障の問題(ファーウェイ幹部の逮捕)と、通商交渉は別」と表明しているが、中国政府はそう見ていない模様。ファーウェイ問題がこじれると、通商交渉にも悪影響が及ぶと考えられます。

【2】米国企業と中国企業の交流が、あらゆる分野で停滞する懸念

 中国企業の幹部が(米政府要請で)カナダで拘束され、カナダ要人が中国で拘束された影響が、あらゆる分野に広がる懸念があります。米国企業幹部は中国に出張することを控え、中国企業幹部は米国に出張するのを控えるようになる可能性があるからです。

【3】中国で米国製品の不買運動が広がる懸念

 中国消費者の間で、米アップル社スマホの不買運動が広がり始めています。これが、あらゆる分野に広がると、中国での売上が大きい米国企業の先行きに懸念が強まります。

【4】米中対立が、2国間に留まらず世界全体に波及する懸念

 日本は12月7日、中国の通信大手ファーウェイとZTE社からの政府関係機関の調達を禁止する方針を決定しました。米国政府の意向を反映し、既にニュージーランドやオーストラリア政府も同様の方針を決定しています。これに、ドイツやフランスなども同調しつつあります。ファーウェイ製品排除に同調する国が広がるとことで、世界全体が、米国陣営と中国陣営に分かれて対極するリスクが出つつあります。

【5】日中の経済関係にも悪影響が及ぶ懸念

 日本は、米中関係悪化で、これまで漁夫の利を得ている面もありました。中国は自動車の輸入関税を25%から15%に引き下げましたが、日本はその恩恵を受けています。中国で米国製品が売れなくなっている分、日本製品がシェアを拡大している分野もあります。近年の日中関係改善は、米中対立激化で中国が日本に気遣いするようになった結果との見方もあります。

 ところが、日本がファーウェイ製品排除に動いたことに対しては、在日中国大使館から日本を非難する声明が出ています。この問題がこじれると、日中の経済関係にもネガティブな影響が及ぶ可能性もあります。

 ファーウェイ社は売上高で約10兆円規模、スマホ生産で世界第2位、携帯電話基地局で世界トップの巨大企業です。ファーウェイ向けに部品などを納入している日本企業( パナソニック京セラ村田製作所JDIなど)には、悪影響が及ぶ見込みです。