4.日本企業とEVの関わり

 日本でEVで先行したのは、日産自動車です。2017年10月に日本で発売した新型リーフは、日米欧で順調に売れています。ただし、テスラのモデル3に比べると性能が低いため、発売日は未定ですが、バッテリーを強化したハイパフォーマンスモデルが発売される予定です。

 また、トヨタ自動車は、2020年から自社ブランドのEVを中国で発売し、その後各国で発売する計画です。

 EV用部品では、パナソニックが現在世界第2位のEV用バッテリーメーカーで、テスラに供給しています。日本電産はEV用駆動モーターの商品化に注力しています。実際に欧州等のEVメーカーからの引き合いがあるもようです。

 自動車の電動化によって、電子部品の搭載個数は増えます。最もポピュラーな電子部品であるチップ積層セラミックコンデンサ(MLCC。自動車用MLCCは、村田製作所、TDKが大手)の場合、搭載個数は内燃機関車の4,800~6,200個に対して、EVは7,050~8,700個に増えます(ADAS分を含む、表3)。

表3 チップ積層セラミックコンデンサの自動車搭載個数

単位:個
出所:村田製作所 Information Meeting 2018資料より楽天証券作成
注:マイクロハイブリッドは、モーターで減速時のエネルギーを回収し、蓄電池に貯め、車両内で使うもの(例:スズキのエネチャージ)

 

5.自動運転ではレベル2が始まった

 自動運転は、現在レベル1のADAS(先進運転支援システム)の新車への標準搭載が進んでいるところです(表4)。更に一部の高級車にはレベル2が搭載され始めています。

 今後を展望すると、レベル2の普及が進む一方で、技術的に難しいレベル3(普段は自動運転だが緊急時のみドライバーが運転する)を飛ばして、レベル4(地域限定の完全自動運転)に進む動きがあります。現時点では2020年代前半~後半にレベル4が普及期に、2020年代後半~2030年代にレベル5(完全自動運転)が普及期に入ると言われています。

 表5はアメリカで自動運転の公道試験を行っている各社のデータです。自動運転の試験走行中に、AI(人工知能)が判断に迷って運転を人間のドライバーに引き継いだ回数であり、各社がカリフォルニア州に2018年1月に提出したデータです。これによれば、ウェイモ(グーグルの親会社であるアルファベット傘下の自動運転子会社)の自動運転用AIは約9,000kmに1回しか迷わなかったということになります。また、GMは約2,000kmに1回なのでウェイモに次いで精度の高い自動運転を実現していることになります。日産自動車は、約330kmに1回、エヌビディアは約8kmに1回と発展途上、ウーバーは十分な数字が出ていないもようです。

 これを見ると、自動運転の完成度ではウェイモが圧倒的に高い水準になると言えます。次いでGMです。日系メーカーでは日産自動車ですが、まだ実用段階とは言えません。トヨタ自動車はこの時点でアメリカで実験を行っていないため、数字が出ていません。

 なお、ウェイモは2018年12月からアリゾナ州フェニックスで地域限定でレベル4の自動運転タクシーのビジネスを開始しました。自動運転は新しい段階へ進むことになります。

表4 自動運転の各段階

出所:楽天証券作成

表5 各社のAIが判断に迷い人間に引き継いだ回数

出所:日経XTECHより楽天証券作成