2.進行する自動車の電動化

 世界の自動車産業にとって、大きな流れが自動車の電動化と自動運転です。この2つのテーマは完成車メーカー、伝統的な自動車部品メーカーにとって直面しなければならない大問題ですが、電子部品、半導体、モーター、ソフトウェアの各メーカーにとっては、大きなビジネスチャンスです。それは、電動化と自動運転によって、自動車から油圧部品、機器がなくなり、自動車が電子部品、半導体、モーターとそれらを制御するソフトウェアの固まりになるからです。

 まず、自動車の電動化の動きを見て行きます。

 表2は、内燃機関車(ガソリン車、ディーゼル車)とHV(ハイブリッドカー)、PHV(プラグイン・ハイブリッド)、EV(電気自動車)のそれぞれの長所、短所をまとめたものです。内燃機関車とHV、PHVは航続距離が長く、部品点数が3万点以上と多いですが、既にサプライチェーンが確立されています。この分野でも、電子部品、半導体、モーター、ソフトウェアが急速に自動車内部に入り込んでいますが、油圧機器も一部ではまだ使われています。

 一方、EVは完全に電動化されます。油圧機器はなくなり、ボディなどの構造を除く自動車の全てが、電子部品、半導体、モーターとソフトウェアで構成されるようになります。部品点数は約2万点と、内燃機関車、HV、PHVに比べ大幅に簡素化されます。ただし、最大の問題点は電池です。エンジンと電動モーターを共用するHV、PHVに比べ、EVの航続距離は電池の性能に依存します。現在のところ、EVの航続距離は300~500kmですが、より長い航続距離を実現するためには、電池の高性能化が必要になります。

 EVに使う電池は、現在は液体の電解液を使ったリチウムイオン電池ですが、2020年代前半から後半にかけて、小型軽量化が可能で燃える心配のない全固体電池が完成する見込みです。全固体電池については、トヨタ自動車が2020年代前半の実車搭載を目指して開発中です。現在、一人乗りの超小型EVに実車搭載できるところまできています。

表2 電気自動車で何がどう変わるのか

出所:楽天証券作成