3.テスラが2018年7-9月期に黒字転換した

 現在、世界で最もEVが普及しているのは中国です。国の補助金で市場が拡大しており、必ずしも魅力的なEVが販売されているわけではないようですが、EV、PHVとも好調に販売を伸ばしています(グラフ2)。2018年11月のEV販売台数は13.8万台(前年比35.3%増)、PHVは3.1万台(同82.4%増)でした。

 EVではアメリカの動きも重要です。EV関連の最近の話題で最も重要なのは、大手EVメーカーのテスラが2018年7-9月期にモデル3の量産に成功し、黒字転換したことです。

 テスラは、普及車種の「モデル3」(約400万円)の量産に2017年7月から取り掛かりましたが、生産自動化で苦戦し、大赤字が続いていました。それが、量産に成功したことによって、モデル3の出荷が2018年1-3月期8,180台(生産は9,766台)、2018年4-6月期1万8,449台(同2万8,578台)、2018年7-9月期5万5,840台(同5万3,239台)と急拡大しました。

 この結果、テスラの損益は、2018年4-6月期の6億2,100万ドル(1ドル=109円換算で約677億円)の営業赤字から、2018年7-9月期には4億1,700万ドル(1ドル=111円換算で約463億円)の営業黒字になりました。モデル3の量産に関しては、これで軌道に乗ったと考えてよいと思われます。

 アメリカでは、カリフォルニアなど12州がZEV規制を導入しており、各メーカーは段階的に全販売台数の一定比率のZEV(Zero Emission Vehicle[ゼロエミッション車]。EV[電気自動車]、PHV[プラグインハイブリッド自動車]など)を販売しなければなりません。これに対してトランプ政権は、各州が独自に導入しているZEV規制を廃止して、燃費規制を緩めようとしています。

 この動きは一見するとテスラにとって逆風ですが、テスラの販売好調は必ずしもZEV規制などの排ガス規制による後押しだけによるものではないと思われます。「エコロジー」がファッションになっていること、テスラ車の性能の良さ、例えば、加速性能のよさ、レベル2の自動運転システム「オートパイロット」を標準搭載していることなどが消費者に訴求していると思われます。テスラには根強いファンもおり、これらのことはテスラの将来を考える上で重要です。黒字転換した2018年7-9月期の営業利益率が6.1%と自動車メーカーとしては悪くない水準であることも重要です。

 モデル3の量産成功とテスラの黒字転換は、他の自動車メーカーのEV事業に大きな影響を与えていると思われます。EV強化を表明している世界の自動車メーカー、例えばフォルクスワーゲン、BMWなどが、テスラのモデル3の量産成功と黒字転換を見て、より一層EV強化に動き出すと思われます。

 なお、アメリカ以外の排ガス規制を見ると、中国は排ガス規制強化によってEVの普及を進める方向です。そして、2019年から中国版ZEV規制を導入する計画です。インドは、2030年に新車販売の30%をEVにする方針です。フランス、イギリスは2040年までに内燃機関の新車販売を全廃する方針で、これにスペインも続きます。

 このように世界の排ガス規制は、EV普及を後押ししています。

グラフ2 中国の新エネルギー車販売台数

単位:台
出所:中国汽車工業協会より楽天証券作成、一部推定を含む

グラフ3 テスラのEV出荷台数

単位:台
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ4 テスラの業績

単位:100万ドル
出所:会社資料より楽天証券作成