日経平均は、目先、上下とも大きくは動きにくい

 この理由は、以下のように不透明要因が多いからです。

(1)貿易戦争の先行きが読めない
(2)中国景気がどうなるか?
(3)米利上げに株式市場がいつまで耐えられるか?
(4)日銀のETF(上場投資信託)年6兆円の買いがいつまで続けられるか?
(5)発表中の4-6月決算が良いのか悪いのか、まだ全体感がつかめない

 言い方を変えると、以下の通りです。

 外国人投資家は目先、日本株を積極的に売りも買いもしないと考えられます。したがって、日経平均にはトレンドが出にくくなります。日本株は「外国人が買えば上がり、売れば下がる」傾向が20年以上、続いているからです。

 

アベノミクス開始後の外国人の売買

 外国人は、買う時は上値を追って買い、売る時は下値を叩いて売る傾向があるので、短期的な日経平均の動きはほとんど外国人によって決まります。

日経平均と外国人の売買動向:2016年1月4日~2018年7月30日(外国人売買動向は7月20日まで)

注:東京証券取引所データより楽天証券経済研究所が作成。外国人の売買動向は、買い越しまたは売り越し額で、株式現物と日経平均先物の合計

 上のグラフを見れば明らかですが、外国人の売買に立ち向かう国内投資家は、短期的にはすべて失敗しています。2016年1~3月は、国内投資家がいくら買っても、外国人の強引な売りの前になすすべもなく、日経平均は急落しています。

 ところが、2016年10月には外国人の買いで日経平均は急騰。その後も 外国人次第の展開が続いています。

 今年の日経平均は、2~3月に外国人売りで急落しましたが、4月以降、外国人が買い始めると上昇を始めました。ただ、6~7月は外国人の売買に方向感がないため、日経平均も上下を繰り返しながら、トレンドが出にくくなっています。

 

裁定買い残高は低下しつつある

 短期的な相場動向を当てるには、外国人の売買動向をしっかり見ている必要があります。なかでも、動きの速いヘッジファンドの先物売買をしっかり見る必要があります。

 私がファンドマネージャー時代に、日経平均先物のトレーディングをする上で、重視していた需給指標に、「裁定買い残」があります。詳しい説明は割愛しますが、裁定買い残の変化に、外国人による投機的な先物買いの変化が表れます。

 外国人が先物を買うと、日経平均が上昇し、裁定買い残が増加。反対に、外国人が先物を売ると、日経平均が下落し、裁定買い残が減少します。

 近年の日経平均および裁定買い残は、以下のように推移しています。

日経平均と裁定買い残高の推移:2007年1月4日~2018年7月30日(裁定買い残は7月20日まで)

注:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 裁定買い残は、アベノミクス開始後の2013~2015年は3.5兆~4兆円まで増加すると、減少に転じていました。日経平均は、裁定買い残が増加している間、つまり外国人が先物を買っている間は上昇します。ところが、裁定残が減少に転じる、つまり外国人が先物売りに転じると、下落に転じます。

 2013~2015年は、裁定買い残が3.5兆~4兆まで増加したところで日経平均先物を売れば、タイミングよく日経平均が下げに転じ、利益を得られる可能性が高かったと言えます。

 2018年1月に入ってすぐ裁定買い残は約3兆5,000億円まで増えましたが、その後、減少に転じています。外国人の先物売買が売り越しに転じたからです。裁定買い残は7月20日には1兆6,459億円まで減りました。買い残高の水準は低くなってきているので、ここからは、徐々に外国人の先物売りが出にくくなると考えられます。

 ただし、裁定買い残高がいくらまで膨らんだら、日経平均が天井をつけるか、いくらまで減ったら日経平均が大底をつけるかは、その時々によって変わります。一概に言えません。

 過去には、裁定買い残高が0.4兆まで減ったことも、6兆円まで膨らんだこともあります。つまり、裁定買い残高だけで相場の転換点を知ることはできません。裁定買い残高と、マーケットに出ている外国人情報を合わせて、判断していく必要があります。

 

 

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