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特集:シリコンウェハ業界(SUMCO、信越化学工業、フェローテックホールディングス)
今中 能夫
楽天証券投資weekly セクター・投資テーマ編
毎週金曜日夕方掲載。楽天証券経済研究所チーフアナリスト 今中能夫の、今週1週間の国内株式市場の情報がつまった週刊レポートです。注目セクターと投資テーマに重点を置いて、相場と銘柄を…

特集:シリコンウェハ業界(SUMCO、信越化学工業、フェローテックホールディングス)

2018/3/30
・2017年の世界の半導体用シリコンウェハ出荷面積は前年比10%増。販売単価は前年比10%上昇した。
・2017年10-12月期に300ミリウェハの前年比約20%の値上げが浸透。2018年は全サイズで値上げが進むと予想される。
・半導体ブームと値上げを背景にシリコンウェハメーカーの業績は好調。注目銘柄は、SUMCO、信越化学工業、フェローテックホールディングス。
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毎週金曜日夕方掲載

本レポートに掲載した銘柄

SUMCO(3436)、信越化学工業(4063)、フェローテックホールディングス(6890)

 

1.2017年のシリコンウェハ世界出荷数量は前年比10%増。単価は同10%上昇

 今回は半導体用シリコンウェハ業界の最近の動きを見て行きます。

 2017年2月6日付けのSEMI(アメリカの半導体、フラットパネルディスプレイなどの製造装置、材料の業界団体)の発表によれば、2017年の世界の半導体用シリコンウェハ出荷面積は前年比10.0%増の118億1,000万平方インチとなりました。2016年の2.9%増から伸び率が大きく上昇しました。メモリ(NAND型フラッシュメモリ、DRAM)中心に半導体生産が増加したことによるものです。

 半導体用シリコンウェハ販売額は同20.8%増の87億ドル(1ドル=112円換算で9744億円)となりました。2016年は0%増で横ばいでしたが、2017年は単価上昇によって出荷面積の伸びよりも販売金額の伸びが高くなりました。

 販売単価は、2016年の0.671ドル/平方インチから2017年は0.737ドル/平方インチへ9.8%上昇しました。業界各社によって2017年10-12月期に300ミリウェハの約20%値上げが行われましたが、その効果が表れたものと思われます。

 半導体用シリコンウェハ出荷面積の四半期ベースの変化はグラフ3のようになります。2017年は1-3月期、4-6月期に大きく伸びて、7-9月期に伸びが鈍化し、10-12月期は前期比(7-9月期比)でやや減少しました。ちなみに、2016年10-12月期は前期比1.2%増でした。2017年は、韓国サムスン電子や台湾TSMCがNAND型フラッシュメモリやロジックを増産するために、300ミリウェハ(12インチ)中心にウェハ在庫を積み増したと言われており、2017年10-12月期の出荷面積にはややその反動が表れたと思われます。

グラフ1 半導体用シリコンウェハの世界出荷面積

単位:100万平方インチ、暦年
出所:SEMIより楽天証券作成
注:ノンポリッシュドウェハを含む

グラフ2 半導体用シリコンウェハの販売単価:暦年ベース

単位:ドル/平方インチ
出所:SEMI資料より楽天証券作成
注:ノンポリッシュドウェハを含む

表1 半導体用シリコンウェハの世界出荷

出所:SEMIより楽天証券作成
注:ノンポリッシュドウェハを含む

グラフ3 半導体用シリコンウェハの世界出荷面積:四半期ベース

単位:100万平方インチ
出所:SEMIより楽天証券作成

 

2.2018年も需給逼迫が続こう。全サイズで値上げか

 半導体用シリコンウェハの需給関係は逼迫した状態が続いている模様です。2017年10-12月期には業界各社が行った300ミリウェハの約20%値上げ(2016年10-12月期に対しての値上げ)が浸透しました。SUMCOが公表している300ミリウェハ値上げ交渉の妥結状況は、2017年10-12月期の約20%値上げの後、2018年10-12月期に2017年10-12月期比20%値上げ、2019年10-12月期に更に10%以上の値上げを実現するというものです。信越化学工業もこのトレンドで値上げすると予想されます。

 また、SUMCOの場合で300ミリウェハの70~80%が1年以上の長期契約(主に2年以上で長期化する傾向にある)になりますが、長期契約ではない20~30%の顧客向けが2018年に20%以上上昇する可能性があります。

 SUMCO、信越化学工業とも、300ミリウェハについては長期契約顧客に対して逐次増産の形で設備投資をしていますが、300ミリ以上に需給が逼迫している200ミリについては、値戻しが十分でないため、各社とも設備投資は行っていません。このため、200ミリは2017年に価格低下が止まり、2018年は20%以上の値戻しが期待できると思われます。これは、150ミリ以下も同様です。

 つまり、2017年の値上げは300ミリウェハだけでしたが、2018年は全サイズでの全面値上げの可能性があるのです。半導体生産の増加が続けば、2019年も300ミリだけでなく、200ミリ、150ミリ以下の値上げが期待できます。

 なお、業界全体の出荷面積構成比は、推定で300ミリウェハ約60%、200ミリ約30%、150ミリ以下約10%です。300ミリウェハは主にメモリや高速ロジック、200ミリはディスクリート半導体や自動車向けマイコン、150ミリ以下はディスクリート半導体、センサーなどに使われます。

 中長期的には、中国の民族系半導体メーカーがシリコンウェハ業界の重要顧客になると思われます。中国の半導体メーカーは今は低中級品のシリコンウェハを使っていますが、2020年以降に高性能半導体(NAND、DRAM、ロジックなど)の量産に成功した場合、中上級シリコンウェハの需要が増えると思われます。実際にSUMCO、信越化学工業に引き合いが来ている模様です。

 

3.シリコンウェハは逐次増産へ。日系大手は本格増産には慎重

 今のSUMCO、信越化学工業の設備投資スタンスは、長期契約顧客に対して必要量を逐次増産するというものです。

 この中で、2017年8月にSUMCOが436億円をかけて300ミリウェハの上級品を月産11万枚増産する計画を打ち出しました(増産率は推定5~10%)。増産分は長期契約顧客向けで、稼動開始時期は2019年1-6月期になります。

 また、業界4位の独シルトロニックは、2年後を目処に月産7万枚の増産を計画しています。韓国のSKシルトロンは中級品以下を月産25万枚増産する計画です。中級品メーカーであるフェローテックホールディングスは、150ミリを現在の月産36万枚から2018年末に月産40万枚にする計画です。更に、2017年に参入した200ミリウェハを今年夏に月産10万枚にして、建設中の新工場での生産も含めて2020年初頭に月産45万枚に増強することを計画しています。

 ただし、このような動きがある一方で、最大手の信越化学工業は、まとまった設備投資には今のところ慎重です。

 このように、限られた範囲のみで設備投資が行われている状況では、業界全体で年率10%以上の出荷面積拡大は難しいと思われます。特に、NAND、DRAM、高速ロジックなどに使われる300ミリの上級品(信越化学、SUMCO、独シルトロニックが生産)の2018年の出荷面積は数%(5%前後の伸び?)の増加に留まると思われます。従って、今の半導体ブームがある程度鈍化しても、シリコンウェハの需給逼迫は続くと思われます。

 なお、一定の規模のシリコンウェハ設備投資が始まっているため、関連企業にも引き合いや発注が来ている模様です。ウェハ生産ラインで重要なシリコンウェハ検査装置はアメリカのKLA-テンコールが独占しています。シリコンウェハのインゴットを薄くスライスするスライサーは東京精密が最大手、シリコンウェハを薄く削るグラインダはディスコが最大手になります。

表2 半導体用シリコンウェハ業界の業界順位

出所:シルトロニック社2017年度プレゼンテーション資料より楽天証券作成

 

4.注目企業

 今回の注目企業は、SUMCO、信越化学工業、フェローテックホールディングスです。
(注:以下のSUMCO、信越化学工業の業績予想は、2018年2月2日付け2月9日付け楽天証券投資WEEKLYから変更していません。)

 

SUMCO

 半導体用シリコンウェハの専業で、世界シェアは信越化学工業に次ぐに2位です。メモリ、ロジックに使われる上級品を大手半導体メーカー中心に供給しています。

 シリコンウェハ専業なので、半導体ブームとシリコンウェハの値上げ効果を全社でフルに受けています。会社側は翌四半期の業績予想のみを公表していますが、それによれば、2018年1-3月期は売上高790億円(前年比31.2%増)、営業利益190億円(同2.4倍)となる見込みです。

 2018年12月期は、楽天証券では売上高3,300億円(前年比26.6%増)、営業利益880億円(同2.1倍)と予想しています。2017年10-12月期の300ミリウェハの約20%値上げと、2018年12月期に予想される平均20%の全面値上げを前提しました。

 また2019年12月期は、2019年1-6月稼働予定の新設備(月産11万枚)の償却負担発生はあるものの、新設備による増産効果と値上げ効果の両方が期待できるため、楽天証券では2019年12月期を売上高3,900億円(前年比18.2%増)、営業利益1,440億円(同63.6%増)と予想しています。

 2018年12月期の楽天証券予想ベースのPERは14倍と割安です。株価は6~12カ月の期間で4,000円を目指すと期待されます。

表3 SUMCOの業績

株価 2,722円(2018/3/29)
発行済み株数 293,278千株
時価総額 798,303百万円(2018/3/29)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの
注2:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益

 

信越化学工業

 半導体用シリコンウェハの最大手です。SUMCO同様、上級品を大手半導体メーカー中心に供給しています。

 半導体シリコン事業(半導体用シリコンウェハ)の業績トレンドは、信越化学が3月決算、SUMCOが12月決算であることから若干のズレがありますが、概ねSUMCOと同じになると思われます。このため、2018年3月期に続き、2019年3月期も半導体シリコン事業は好業績が予想されます(表5)。

 信越化学は、塩ビ・化成品事業(アメリカのシンテック社による塩化ビニル事業、信越化学のカ性ソーダなど)、シリコーン事業(化粧品、自動車、電子機器などに使う)、電子機能材料事業(希土類磁石、半導体向けフォトレジスト、マスクブランクス、光ファイバー用プリフォーム(光ファイバーの原料))など複数の事業を行っています。今3Q(2017年10-12月期)までの実績を見ると、半導体シリコン事業のほか、塩ビ・化成品事業、シリコーン事業が好調です。当社の各事業の特徴は、幅広い分野で使われる重要製品が多いということです。そのため、半導体シリコン事業、電子機能材料事業を除くと、一般的な景気変動の影響を受け易いという面があると思われます。

 業績好調を背景に、株価は6~12カ月の期間で1万3,000~1万4,000円への上昇が期待されます。ただし、アメリカの金利上昇、貿易戦争への懸念などによって、目先の株価は振るわない可能性もあります。

表4 信越化学工業の業績

株価 10,875円(2018/3/29)
発行済み株数 426,502千株
時価総額 4,638,209百万円(2018/3/29)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの
注2:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益

表5 信越化学工業のセグメント別業績

単位:億円
出所:会社資料より楽天証券作成。予想は楽天証券
注:億円未満を切り捨てたため合計が合わない場合がある

 

フェローテックホールディングス

 フェローテックホールディングスの事業は、「半導体等装置関連事業」、「電子デバイス事業」、「太陽電池事業」、「その他」の4つに分かれています(表7)。このうち、最も重要で全社業績を牽引しているのが、半導体等装置関連事業です。

 半導体等装置関連事業は、真空シール関連、石英製品、セラミックス、CVD-SiC、EBガン、ウェーハ加工に分かれています(表8)。最も重要なのは真空シール関連事業で、半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置、各種ロボットに使われています。真空シールは、装置内部の真空空間を不純物から守りつつ、作業のために外部からの回転運動を装置内部に伝えるものです。世界シェアは65%で、大手半導体製造装置メーカー、FPD製造装置メーカー、ロボットメーカー(東京エレクトロン、キヤノントッキ、安川電機など)に販売しています。

 石英製品は、半導体製造装置(前工程)に使われます。エッチング、成膜工程で使われるウェハの固定治具です。セラミックも主に半導体製造装置用の部品に使われます。

 今後大きな伸びが期待できるのがウェーハ加工事業です。中国で150ミリ(6インチ)のシリコンウェハを月産36万枚生産しています。今後は150ミリを2018年末に月産40万枚に増強する計画です。

 また、2017年に200ミリウェハ(8インチ)に参入しました(生産は中国)。進捗が遅れていましたが、2018年夏には月産10万枚が実現できそうです。さらに2020年までに月産35万枚を追加して、200ミリウェハ月産45万枚体制を実現する計画です。なお、当社は半導体用シリコンウェハ世界第3位の台湾グローバルウェーハズと販売・技術提携を結んでいます。

 当社のシリコンウェハの販売先は、中国のディスクリート半導体メーカー、アメリカ、欧州のセンサー、パワー半導体メーカーなどです。品質レベルは中級品と思われます。200ミリウェハの設備投資負担があるため、今期はウェーハ加工事業からの業績寄与を見込みにくいと思われます。ただし、上級品と同様中級品の150ミリ、200ミリも値上げを行っています。中国でもシリコンウェハが不足しており、2020年3月期までには全社業績への寄与が期待できそうです。

 半導体ブームの恩恵を受けていること、今後シリコンウェハの重要な市場になる中国で、シリコンウェハ工場を稼動させていることが注目点です。好業績を背景に、株価は6~12カ月の期間で3,500円前後までの上昇が期待されます。

表6 フェローテックホールディングスの業績

株価 2,611円(2018/3/29)
発行済み株数 36,965千株
時価総額 96,516百万円(2018/3/29)
単位:百万円、円
出所:会社資料より楽天証券作成
注1:発行済み株数は自己株式を除いたもの
注2:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益

表7 フェローテックホールディングス:セグメント別業績

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成
注:四捨五入の関係で合計が合わない場合がある

表8 フェローテックホールディングス:半導体等装置関連事業売上高の詳細

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成

本レポートに掲載した銘柄:SUMCO(3436)、信越化学工業(4063)、フェローテックホールディングス(6890)
 

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