米国株式は需給が改善しやすい季節へ

 米国株式は8月以降に調整を余儀なくされました。FRBによる高金利維持政策に投資家が身構えてきた中、「iPhoneショック」に象徴される中国リスク、UAW(全米自動車労働組合)によるストライキ拡大、政府機関閉鎖リスクなどの不安材料が重なり株式市場の地合いを悪化させました。

「悪い時には悪い材料が続く」と言われますが、原油相場高に伴うインフレ警戒感の再燃や米国債を巡る信用リスクの高まりが債券市場の長期金利を押し上げ株式のバリュエーション評価に影響を与えました。

 ただ、長期目線で過去の市場実績を振り返ると、株式の好不調に「季節性」が見られてきたことに注目したいと思います。図表3は、過去30年(1993年から2022年まで)のダウ工業株30種平均の年初来推移を平均化したグラフです。

 傾向として「株価は8月から9月にかけて停滞もしくは調整しやすかった」ものの、「相場は10月に底入れした後に秋冬相場(年末高)を経てその年の高値を更新したことが多かった」ことが分かります。

 こうしたアノマリー(季節性)は、秋にかけてミューチュアルファンド(米国の公募投信)やヘッジファンドによる「節税対策の売り」が重なりやすかった一方、その後は買い戻しが広まりやすかったとの説が有力です。

 明確な理由は定まっていません(だからアノマリーと呼ばれます)が、世界のファンドマネジャーやトレーダーが共有している相場トレンドに関わる参考情報とは言えそうです。

 米国市場では市場心理が悪化しており、目先は神経質な値動きを伴う日柄整理を要する可能性もあります。ただ、長期市場実績に基づく季節性を加味すれば、市場心理が悲観に傾いた最近のような局面では、押し目買いや時間分散を重視した積み増し買いが長期的資産形成に寄与すると考えています。

<図表3>長期市場実績で米国株の「季節性」を検証してみる

(出所) Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1993~2022年)

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