インフレに強い金やコモディティ

――インフレや地政学的リスクの台頭が続く中、株式一辺倒のポートフォリオから一部の資金を乗り換える「プラスアルファ」の投資対象としては何があるのでしょうか?

吉岡 インフレに強いという意味で注目したいのは、金(ゴールド)やコモディティ(商品)です。株式と異なる値動きをする傾向がある点も、リスク分散の面で有望です。

――確かに金(ゴールド)やコモディティ(商品)は、インフレで価格が上昇する「モノ」の代表。モノの値段が上がっていくインフレ時代に適した投資対象ですね。

吉岡 そこで、「米国株だけで100%」資産運用した場合、ちょっと極端かもしれませんが「米国株50%・金50%」、「米国株50%・コモディティ50%」の比率で資産配分した場合の3パターンについて、過去の期間別のリスク・リターンを比較してみたのが下のグラフになります。

 グラフでは、左上に位置するほどリスクが低くリターンが高いことになるので、投資効率が高かったと考えられます。

米国株式と金・コモディティをあわせ持った場合のリスク・リターン比較(投資期間別)

(出所)Bloombergのデータを基に三菱UFJ国際投信作成
(期間)1年:2021/1~2022/1、月次 10年:2012/1~2022/1、月次 20年:2002/1~2022/1、月次
・米国株式はS&P500指数(配当込み)、コモディティはブルームバーグ商品指数(配当込み)、金はスポット価格(いずれも円換算ベース)を使用しています。指数については【当WEBページで使用している指数について】をご覧ください。計測期間が異なる場合は、結果も異なる点にご注意ください。
・上記は、過去の実績・状況または作成時点での見通し・分析であり、将来の市場環境の変動や運用状況・成果を示唆・保証するものではありません。また、税金・手数料等を考慮しておりません。

※図の横軸はリスク、縦軸はリターンの度合い。リスクに関しては期間中の価格の月次の価格変動の騰落率(上昇・下落率)のばらつき具合(標準偏差)を年率換算して測定。リターンに関しては、月次の騰落率の平均値を年率換算。

――ここ1年では「米国株+コモディティ」のリターンが35%超と、「米国株単独」の30%程度を超えています。リスクについても、「米国株単独」での投資よりも、コモディティや金に半分投資したほうが約3~4%程度低くなっていました。

吉岡 昨年後半からインフレが加速度的に進んだ結果、資産別リターンを見ると、コモディティの上昇率が年率4割超と、米国株式のパフォーマンスを上回って推移したのが大きかったですね。

 一方、過去20年間という長期スパンで見ると、「米国株+金」の組み合わせが、「米国株単独」よりリスクを約5%程度抑えながら、「米国株単独」と同等の年率10%程度のリターンを得られた結果になりました。

 長期投資では資産分散の一つの手段として「金」をあわせ持つことでリスクを抑えながら運用ができる一方、足元の物価上昇からのリターンを期待したいという意味では、「コモディティ」への投資も選択肢の一つとして検討しても良いのではないでしょうか。

――米国株オンリーよりも米国株に金を加えたほうがリスクあたりのリターンが向上した、というのは驚きです。

吉岡 確かにここ数年は米国株のパフォーマンスがよく、そこしかご存じない方には意外かもしれません。やはり、株価の下落が極めて大きかった2008年秋のリーマンショックを挟んでいるかいないかが大きいと思います。

 過去を振り返ると10年に1度くらいの頻度で大きな危機が起こっています。金は普段、それほど目立たないですが、そのような、いざという危機のときに本当に「がっつり、いい仕事をしてくれる資産」だと思います。

 コロナショックのときも、株価が大きく下落するなか、金の価格は大きく上昇しました。あらかじめ危機に備えて、こつこつ金に投資していた人にとっては、頼りになる資産であることが実感できたと思います。