米国株一辺倒からインフレリスクを意識する運用へ

――三菱UFJ国際投信といえば、つみたてNISAなどで人気を誇るインデックスファンドシリーズ「eMAXIS Slim」の運用で知られています。2022年は年初から米国株も大きく下落するなど、株式インデックスファンドにつみたて投資をしている個人投資家の間にも「どこまで株価は下がるのか?」「本当にこれからまた上がるのか?」といった不安や懸念が広がっていませんか? 

吉岡  新型コロナウイルス感染症が国内でも広がって以降、在宅勤務などで時間的な余裕ができたことなどで、日本でも投資に興味を持たれる人が増えています。

 それ自体はいいことですが、投資に興味を持った多くの方々は、例えば「人気があるから」「みんなが買っているから」「そのとき、パフォーマンスがいいから」というような理由で、ここ数年、非常に調子のよかった米国株に集中して投資されてこられた、という方も多いのではないでしょうか。

 そんな中、インフレによる金融引き締め懸念やウクライナ危機などを受け、さすがの米国株も変調をきたしています。「リスク管理は大丈夫だったか」「米国株だけに投資するのではなく分散投資すべきではないか」など、これまでの投資方針を少し考えるべき時期に来ているのではないかと思います。

――2022年2月下旬にはロシアのウクライナ侵攻も起こり、株式市場に逆風が吹いています。

吉岡 ウクライナ危機に関しては、今後どうなっていくか、予測が難しい問題です。ただ10年、20年といった長期的スパンでの資産形成にとっては、一時的なことかもしれないと私は思います。投資初心者の方は、保有していた米国株などのファンドの基準価額が下落したことに大きな不安を感じている方もいらっしゃるでしょう。

 ウクライナ危機に限らず、「10年に1度」といえるような危機が来たときに、投資をやめないですむにはどうすればいいか? そのためには、やはり米国株だけでなく、異なる値動きをする金融資産に分散投資することも一つの方法ではないでしょうか。

――今後も株価の大敵になるような急激なインフレや地政学的なリスクは続くでしょうか?

吉岡 FRBをはじめとした各国中央銀行が金融引き締め策を進めれば、今の急激な物価上昇にはいずれブレーキはかかると思います。とはいえ、各国中央銀行がインフレ目標を年率2%程度としている中、適度なインフレは今後も続いていくでしょう。

 また、今回のウクライナ危機のような地政学的なリスクの台頭は、原油をはじめ資源価格の高騰につながる場合があります。また地球温暖化を防ぐために、世界各国が再生可能エネルギーへの転換を進めていることで、資源開発の上流投資が減少し、エネルギー価格の高止まりにつながる可能性があります。

 今後、ロシアだけでなく中国と西側諸国の政治的な緊張が高まれば、”世界の工場”といわれる中国から安価な工業製品が流入して物価上昇を抑えるといった構図も変わってくる可能性もあります。

 資産運用においても、インフレに強い金融商品をしっかり持っておくという発想が大切になってくると思います。