アクティブファンドを選ぶとき、何を手がかりにすればいいの?

 武田:まずリターンが良い悪いという視点は判断基準の一つですが、それだけではありません。忘れてはならないのは「どれくらいのリスクを取っているファンドなのか」と言うことです。

個人投資家の方に言えることは、「投資信託をリターンだけで選ぶのは危険」ということ。リターンにばかり注目するのは人間の本能だから仕方ないのですが、リスクとリターン、このバランスを取らなければ、投資で長期的に成功はできません。

最後に私は、「アクティブファンドマネージャーはもっと意見を発するべきだ」と考えていて、月次報告書などで、「なぜ、この会社がいいと思っているのか」や「株式投資はこうあるべきだ」ということを、お伝えしようとしています。

 

アクティブファンドの良し悪しはどう見分ければいいでしょうか?

武田:最近問題になっているのは、「クローゼット・インデックス・ファンド」です。アクティブファンドを掲げていながら、ふたを開けてみると投資先がベンチマークに酷似していて、運用成績もほとんどベンチマークに連動している。 

特に私自身が注意を払っているのは、「アクティブ・シェア」と呼ばれるポートフォリオがアクティブ運用されている度合いを表す指標(数値はベンチマークと完全一致すれば0%、全く異なると100%。目安は80%以上といわれる)です。

藤野:アクティブ・シェア70%以下のアクティブファンドは「なんちゃってアクティブ」の可能性がありますね。実態としてインデックス型に近いのに手数料が高いだけ。アクティブ・シェアの計算式は公表されているので、その気になれば投資信託の運用報告書のデータから算出可能ですが、個人投資家でもできる簡単な見分け方としては、投資信託の運用する上位10銘柄が、インデックスの構成銘柄と似ていないかどうかを調べる方法もあります。

実際、今の日本では個人投資家の資産形成に真に役立つと言えるアクティブファンドはやはり少数です。目先の流行を追い求めるテーマ型ファンドも気をつけないといけません。昨年2017年から中小型株ファンドに多く資金が集まっています。中にはマザーズ指数やJASDAQ指数などのベンチマークに忠実なファンドもある。

ですが、市場規模が小さいマザーズの上位銘柄をみんなで買えば株価は当然つり上がっていきます。中小型株ファンドが人気になることで、指数上位の銘柄が実態以上に買われすぎてしまうわけです。

だからこそ「中身が大事」です。中小型株ファンドの中には指数とは関係なく、ちゃんと会社の中身を見ているものもある。中小型株ファンドに限らず、直近のリターンだけでファンドを選ぶのは危険だからやめていただきたい。

酒井:(ファンドの見分け方が難しい面もあるので)自分の資産の何割を使って投資をするのかを決めることが重要になります。例えばもし価格が10%下落しても、投資額を資産の10%にとどめていたら、資産は1%しか減りません。投資信託は分散投資を徹底している商品ですが、その一方で特定のリスクを背負っているエッジの効いた投資信託もある。いろいろな投資信託があることを理解して、投資金額を調整すれば、それほど怖がることはありません。

藤野:投資の極意を知らなければ投資ができないなどということはありません。車の運転に例えれば、多くのドライバーはエンジンの構造を詳しく知らずに運転していると思います。それでいいのです。

 

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〔教えてくれたのは〕

藤野英人(ふじの・ひでと)
レオス・キャピタルワークス 代表取締役社長 最高投資責任者
1990年、野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)に入社。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなどを経て、03年レオス・キャピタルワークスを設立。08年に「ひふみ投信」を立ち上げる。

武田政和(たけだ・まさかず)
スパークス・アセット・マネジメント ファンド・マネージャー
1996年、日本長期信用銀行(現新生銀行)に入行。1998年、長銀ウォーバーグ証券(現UBS証券)に出向。1999年、スパークス・アセット・マネジメント入社し、「新・国際優良日本株ファンド(愛称:厳選投資)」 の運用チームに所属。

酒井義隆(さかい・よしたか)
アセットマネジメントOne
運用本部 株式運用グループ 国内株式担当 ファンドマネジャー
2004年、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)に入社。2005年よりファンドマネジャーとして国内株式運用などを担当

 

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