インデックス投信がいいのか、アクティブ投信がいいのかは永遠のテーマ。アクティブマネージャーの立場で、日本株に関してアクティブを勧める理由を語り合った。
インタビュアー:楽天証券 篠田尚子

投資信託は日本人の将来生活の味方か敵か?

外国株はインデックス、日本株はアクティブがいい

篠田: マーケットの現状を知って投資をしたいと決めた初心者が投資信託を選ぶ時、どのようなものを選べばいいのでしょうか。ネット証券を利用している投資家に共通しているのは、1本目は外国株のインデックスファンドが多いと言うことです。そこで、初めての投信を選ぶ時や2本目の投信を選ぶ時は、どのような視点で買えばいいのでしょうか。

 

酒井: アクティブファンドがいいのか、インデックスファンドがいいのかという事がひとつのポイントになるかもしれません。私はマーケットに何か変化があった時、担当しているファンドを一番に考える立場なので、自分自身の投資に時間を費やすことができません。その点では本業に忙しい一般のビジネスパーソンと同じだと思います。

私は資産の3分の1で自分で運用している日本株のアクティブファンドを買い、3分の2で外国株のインデックスファンドを買っています。日本株がアクティブなのは、日本株にはファンドマネージャーが活躍する余地があると考えているからです。もしファンドマネージャーを辞めたとしても、日本株に関しては「当面の間」はアクティブを買いますね。

 

篠田: 外国株がインデックスファンドなのは?

酒井: 外国株を調べる時間がないからです(笑)。

篠田: アクティブがいいか、インデックスがいいかというのは、よく議論になりますね。

酒井: その議論は、外食にたとえればチェーン店がいいのか個人店がいいのかくらいの違いしかありません。お客さまの使い勝手で選べばいいのです。

また投信の評価について専門家は「過去のリターンは将来のリターンを約束しない」、つまり過去が良いファンドだから将来も良いとは限らないと言うのですが、それはそれで正しいものの、レストランの評価サイトの評価がどこまであてになるかという話に似ています。

確かに過去の評価が良くても、自分が来店した時に味が保証されるわけではないけれど、評価が高いところはそれなりにおいしい。批判が多い毎月分配型も、上手に使いこなしている人もいます。そこで固定観念を持たずに、自分の使い勝手のいいものを選べばいいというのが私の意見です。

篠田: 周りの意見やランキングにとらわれすぎないということですね。

藤野: 私も酒井さんと同じく、日本株はアクティブ、外国株はインデックスがいいと思っています。インデックスファンドはどの指数に投資しているかが重要なのですが、日本株の代表的な指数であるTOPIX(東証株価指数)がよくないのです。TOPIXは時価総額の大きい銘柄の影響を強く受けるのですが、時価総額上位の会社を見てみると大きな成長が見込めなさそうな会社が多い。それらが足を引っ張ってしまうのです。

私は10年間「ひふみ投信」を運用してきましたが、インデックスにほとんど負けたことがないどころか、常に運用成績上位10%に入っている。それができる理由は二つしかなく、一つは「詐欺」(笑)、もう一つは日本株インデックスに勝つ方法があるいうことです。

篠田: 投信の資産は厳しく管理されているので「詐欺」ではない(笑)から、勝つ方法があるということですか? 時価総額上位の会社は成長性のない会社が多いというところに秘密がありそうですね。

 

藤野: はい、そうした銘柄群を除外すればいいのです。強い言葉で言えば、日本株インデックスを買うということは、日本経済の成長を阻害する会社の株もまとめてたくさん買っているということです。海外ではインデックス投資が主体とはいえ、極端なアクティブ投資をする投資家もたくさんいて、その人たちがリスクテイクしているおかげで結果的によい会社の株価が上昇し、銘柄選別機能が働いている。米国株を見てみると時価総額の上位にアップル、フェイスブック、アマゾン…と成長性が高い会社がずらずら並んでいますよね。だからインデックスをそのまま買えるわけです。

日本はアクティブ投資の人がほとんどおらず、インデックス投資が正統だという雰囲気がある。米国の理論をそのまま当てはめて、米国ではこうなっているから、と日本でもインデックス投資を勧める人が多いのだけれど、それではパフォーマンスは上がらないし、むしろそのせいで日本の成長を阻害する会社が買われ続けてしまうことが日本経済においては最大の問題です。それを除去する目的で、スチュワードシップコードとか、コーポレートガバナンス・コードとか、ESG(環境・社会・企業統治)の導入が始まっていますが、その効果が出るのはまだ先の話。お金のパッシブ化、つまりコスト重視でマーケット全体を買うような動きが進行している間は、私たちアクティブマネージャーは勝ち進むことができると思っています。

篠田: いつまで勝てるのでしょう?

藤野: さきほど酒井さんが「当面の間」と言ったのを、私は聞き逃していません(笑)。つまり、長い年月の間にはどこかで必ず修正が入り、だめな会社が落ちて、成長性があってきちんと税金を払っているいい会社がインデックスの上位にくるようになる。そうなると、私たちが勝ちにくい時代がくるでしょう。