「時間的余裕」という表現を止め、利上げ判断はデータ次第という通常の姿勢へ
「II.金融政策運営に関する意見」にも注目すべき意見が多数掲載されていました。まず、最初と二つ目の執行部と思われる意見から確認しましょう(図表2)。
図表2 10月「主な意見」の金融政策に関する執行部の意見
まず、最初に掲載された意見ですが、出だしの「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、金融緩和の度合いを調整していくという基本的な考え方に変わりはない。」は、前回9月と全く同じです。
しかし、9月の「主な意見」では、その直後に「もっとも、金融市場は引き続き不安定な状況にある。」という記載がありました。今回はそれが削除されています。金融市場の不安定性が利上げの障害でなくなったことを示しています。
そして、総裁記者会見で記者から何度も質問が出た「時間的余裕」という表現について触れているのが2番目の意見です。9月の「主な意見」でも2番目の意見が「時間的余裕」に触れていました(下記)。
最初にこの言葉を使い始めた内田副総裁と思われるこの意見が、それを使う局面でなくなりつつある、つまり次回会合では局面でないと言っているわけですから、利上げへのコミュニケーション上の準備と捉えることが可能です。
当面は、米国はじめ海外経済や金融資本市場の動向と、それらが見通し・リスク・確度に及ぼす影響を見極めるべき局面である。最近の円安修正に伴って、輸入物価上昇による物価上振れリスクも減少しているので、見極めるための時間的余裕はある。
(出所)日本銀行