イエレン財務長官の理論

 FRB前議長で経済学者でもあるイエレン財務長官は、30数年前に発表した労働市場に関する学術論文の中で、「不況の後、多くの人々は労働市場から完全に離れるが、時間の経過と共に、景気回復と賃金の上昇を期待して、再び労働力として戻ってくる」と論じました。

 2020年に発生した新型コロナ禍で、仕事をやめて引退する働き手が急増しました。労働市場のひっ迫で労働コストが上がり、インフレ率は急上昇しました。しかし、時間がたつにつれ、高賃金に惹かれたりインフレで生活が苦しくなったりすることで、再び労働市場に戻ってくる労働者が増えてきます。

 労働力参加率が上昇する中で失業率と賃金は次第に安定に向かい、賃金の伸びは低下していく。これがイエレン氏の考えです。今後の雇用市場は、イエレン理論の正しさを証明することになるかもしれません。