はじめに

 今回のアンケート調査は、2024年6月24日(月)~26日(水)にかけて行われました。

 6月末の日経平均株価は3万9,583円で取引を終え、前月末終値(3万8,487円)からの上昇幅(1,096円)が1,000円を超えたほか、月間ベースでも2カ月連続の上昇となりました。

 月末終値同士の単純な比較では、株価水準を切り上げた印象ですが、6月の値動きを振り返ると、ほとんどの局面で3万8,000円から3万9,000円のレンジ相場が続いたほか、テクニカル分析的にも75日移動平均線を意識した膠着(こうちゃく)感が強い展開となりました。

 ただし、月末にかけては、上半期末というタイミングによる配当金の再投資観測や、為替市場で歴史的な水準まで円安が進行しました。

 その恩恵を受ける銘柄が物色されたこと、くすぶる日本銀行の利上げ観測を背景に銀行などの金融株が買われたこと、そして、売りが目立っていたグロース株に対して、主力大型のバリュー株がその受け皿になったことなどによって、株価は戻り基調を強めていき、日経平均は再び4万円台をうかがうような状況で7月相場を迎えることになりました。

 このような中で行われた今回のアンケートですが、3,000名を超える個人投資家からの回答を頂きました。

 日経平均の見通しDIは、1カ月先・3カ月先がともに、株高見通しが後退したほか、為替のDIについては、ドル円、ユーロ円、豪ドル円のいずれも円安の見通しを強める結果となりました。

 次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し

「DI後退も中期の買い意欲は残す」

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

 今回調査における日経平均の見通しDIは1カ月先がマイナス3.95、3カ月先は+5.88となりました。前回調査の結果がそれぞれ+4.05と+7.65でしたので、1カ月先・3カ月先ともにDIの値が悪化したことになります。

 今回の調査期間(6月24~26日)の1週間前である6月17日に、日経平均が前日比で700円を超える下落を見せていたことも影響を与えた可能性がありそうです。

 また、回答の内訳グラフを見ると、強気派の割合が20%を下回りました。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 1カ月先DIにおける2024年からの強気派の割合をたどっていくと、46.95%(1月調査)、59.03%(2月調査)、41.41%(3月調査)、23.94%(4月調査)、21.89%(5月調査)となっています。

 年初からの3カ月間(1月~3月)と比べると、直近3カ月(4月~6月)の強気派の割合は大きく減少し、短期的には上値追いのムードが高まらない状況が続いてきたといえます。

 その一方で、中期的な買い意欲は比較的保っていると思われます。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 今回調査における3カ月先DIの強気派の割合は、上の図にもあるように29.72%でした。DIの値は前回よりも低下しましたが、強気派の割合については、実は前回(29.14%)よりも増えています。

 また、先ほどと同様に、3カ月先についても強気派の割合の推移をたどると、38.23%(1月調査)、31.53%(2月調査)、32.39%(3月調査)、34.35%(4月調査)、29.14%(5月調査)と、1カ月先と比べるとあまり減少していません。

 4月中旬から6月下旬の日経平均は、2万8,000円から2万9,000円水準の範囲内で推移する展開が続きましたが、今回のDIの結果が示すように、「短期的には積極的に上値は追えないものの、中期的な先高観は持続しているため、下値は拾える」という見通しが、こうした株価の値動きに表れたのかもしれません。

 そして、足元の株式市場は7月を迎え、2024年相場の後半戦に入りましたが、日経平均は2日の取引終了時点で節目の4万円台を再び回復するなど、順調な滑り出しを見せています。

 こうした株高の背景には、これまでの相場のけん引役となっていた一部の半導体やグロース株が軟調となる中でも、主力大型株を中心としたバリュー株が受け皿になったこと、そのグロース株自体も軟調気味ながらも、株価が上昇する場面があるなど、まだ相場自体は崩れていないことが挙げられます。

 また、日銀の利上げ観測という不透明感がかえって、銀行株買いを誘発している面があることや、歴史的な水準まで進行してきた円安や、中国からの資金シフトなども追い風となっています。

 ほかにも、地政学的リスクへの警戒を背景とした、サプライチェーン(供給網)の再構築における日本の優位性を評価する買いや、防衛関連銘柄にも買いが向かうなど、本来であれば相場が嫌気するはずの金融政策の引き締めや、地政学的リスクが日本株にとってプラスに影響した面もあります。

 こうした株価の上昇材料は目新しいものではなく、「以前にも見てきた景色」でもあるため、7月相場は「ここからさらに買い上がっていけるか」が試されることになります。

 さらに、7月の中旬以降は日米で決算シーズンが本格化するほか、中国では「三中全会(中国共産党中央委員会による第3回目の全体会議)」が開催されます。

 そして、下旬になると、パリオリンピックが開幕し、月末には、FRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(米連邦公開市場委員会)と、日銀の金融政策決定会合が同じ日程(30日~31日)で開催されるなど、注目のイベントが多く控えています。

 これらのイベントをこなしつつ、株式市場は中長期的な相場シナリオを探っていくことになりそうです。

今月の質問「2024年下半期に注目できそうな株はありますか?」

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 ここからは、テーマを決めて行っている「今月の質問」について書きます。6月のテーマは「2024年下半期に注目できそうな株はありますか?」でした。

 2024年も折り返しを迎え、さまざまなメディアで2024年の下半期に関する記事を目にするようになりました。パリオリンピック・パラリンピックや米大統領選挙など、注目度が高いイベントが目白押しの2024年下期に対して、個人投資家の皆さまはどのような思いを抱いているのでしょうか。

 まずは、2024年下期への全体的な期待感をうかがう意味で、注目できそうな株がいくつあるか、尋ねました(質問1)。注目できそうな株の数が多いほど、2024年下期への期待感が大きくなるのではないか、という見立てです。参考情報として、2023年11月に実施した「2024年に注目できそうな株はありますか?」の回答も記しています。

質問1:2024年下半期に注目できそうな株はありますか?

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 半数以上に当たる66.7%の方が、「1つ~5つ」と回答しました。また、全体のおよそ4分の1に当たる25.1%の方が「注目できる株はない」と回答しました。参考情報として掲載した2023年11月の調査結果と比べると、それぞれ2.9%、7.9%上昇しました。逆に、「6つ~9つ」と「10以上」と回答した方の割合は低下しました。

 全体的に、2023年11月に比べて、期待できる株の数が減少したといえます。

質問2:「世界」における2024年下半期の注目材料を挙げてください(複数選択可)

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

「世界」における注目材料については、全体の4分の1を超える26.0%の方が「米大統領選挙(11月)」と回答しました。2023年11月に比べて2.4%上昇しており、注目度が高くなったことが分かります。今年3月より選挙戦が始まり、おおむね民主党と共和党の候補者が絞られ、11月の選挙に向けた論戦が始まったことが、注目度が高まった要因であると考えられます。

「欧米の金融政策」「ウクライナ戦争」「中東情勢」「物価動向」などは2023年11月に比べて回答割合は低下しました。

質問3:「日本」における2024年下半期の注目材料を挙げてください(複数選択可)

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

「日本」における注目材料については、全体の3分の1弱に当たる31.2%の方が「日銀の金融政策」と回答しました。2023年11月に比べて6.1%低下しており、やや注目度が低くなったことがうかがえます。「物価動向」も5.2%低下し、回答率は19.4%となりました。

 逆に回答率が上昇したのが「東京都知事選(7月)」「自民党総裁選(9月)」でした。日本の行方を占い得る大規模な選挙が近づき、注目度が上昇したといえます。特に東京都知事選挙については、さまざまな背景を持った人たちが立候補し、広くメディアで報じられていることが、回答率が上昇した大きな要因であると考えられます。

 ここまで、「2024年下半期に注目できそうな株はありますか?」というテーマで行った各種質問の回答結果をまとめました。今後もさまざまなテーマを用意し、個人投資家の皆さまのお考えを伝えていきます。