資産運用の究極の目的は「インフレヘッジ」である

 中国政府は、西側諸国への依存からの脱却に関するロシアとの共同声明に続き、少なくとも533億ドル相当の米国債を売却した(それでゴールドを購入)と発表した。

 JPモルガンは、バイデン氏の制裁の武器化が脱ドル化を加速させていると警告している。これにより、存在するドルの3分の1にあたる8兆ドルを占める外貨準備金が危険にさらされることになる。中央銀行がドルの売却を続ければ、再び二桁のインフレに陥る可能性がある。

 ロシアのサンクトペテルブルクの裁判所は、西側の銀行3行が所有する7億ユーロ相当の資産を差し押さえた。「ウニクレディト、ドイツ銀行、コメルツ銀行の資産7億ユーロを差し押さえた」とFTが報じている。

【重要な点は、FRBは景気後退がないと想定していること、そして議会が何をしようと、FRBは長期的にインフレ率を2%に抑えると想定していることだ。つまりFRBは、歴史がそうでないことを示唆しているにもかかわらず、自分たちがコントロールしていると思い込んでいるのだ。FRBは不況を予想したこともなければ、不況をリアルタイムで発見したこともない。

財政赤字は現在34兆ドルを超え、国民が抱える負債は27兆ドルだ。国債の利子は1兆ドルを超えている。投資に回されるはずの資金は、代わりに国債保有者の手に渡る。どちらの政党も赤字支出を直そうとはしない。今後もそうだろう。そして、次の不況ではさらに悪化するだろう。無制限な財政刺激策が今の混乱を招いたのであり、選挙でどちらが勝っても政策転換を示唆するものは何もない】

(出所:5月19日ゼロヘッジ 『誰が選挙に勝とうとも、インフレはさらに進むだろう』)

 米国や日本だけではない。世界の債務対GDP(国内総生産)比は急上昇している。政府は通貨の購買力を徐々に低下させることで、膨大な借金(財政の不均衡)をごまかすことができることを知っており、G7の先進国経済はインフレによって富の移転を図っている。

 すなわち、インフレは、預金貯蓄者と実質賃金から政府への隠れた富の移転であり、それは偽装された税金である。

 こうした中、中国の爆買いによってゴールドは対ドルで史上最高値を更新してきた。

ゴールドCFD(週足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 下の図はもう何年も前にレポートで取り上げたレイ・ダリオの『世界秩序の変化』だが、これから米国の分断が加速度的に進むだろう。

米帝国のサイクル

出所:レイ・ダリオ(リンクトイン)

 バイデン政権(米民主党)は大統領選挙に勝つためなら、なんでもするだろう。11月の米大統領選挙までは株価維持政策と自社社株買いで株式市場の大幅な下落は避けられるだろうが後が怖い。

 ダウ工業株30種平均は2万ドルに達するまでには121年かかった。それから7年で4万ドルに到達した。これは100年に1回のスーパーバブル現象ではないだろうか?

NYダウCFD(月足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 現在、世界中で横行している財政・金融介入によって、債務が前例のない規模に膨れ上がっている。『国家興亡の方程式 歴史に対する数学的アプローチ』の著者ピーター・ターチンによると、往々にして、迫りくる崩壊の最終的な引き金になるのは国家の財政破綻だという。エリートたちは市民の不満を、補助金や配給によってなだめなければならない。

 それらが尽きれば、もはや不満分子を監視し、人々を弾圧するしかなくなる。

 金融インフレの時代には資産価格が、ほぼ際限なく、つまりシステム全体が破綻するまで上昇するが、過去の超インフレ期に株価がどう動いたか、1919~1923年のワイマール共和国や1978~1988年のメキシコをみれば分かるように、金融インフレに積極的に関与するシステムは、つまるところ破綻する。

 インフレ期には実質賃金が減少して大衆の生活水準が落ちてしまうからだ。

 いずれにせよ、問題は「インフレ」だ。資産運用の究極の目的は「インフレヘッジ」である。インフレへの転換によって、私たちの生活を支えるには「金融」よりも「モノ」の方がはるかに重要であることが今後徐々に認識されていくだろう。今後、世界の国々で「金融」への関心が薄れ、「モノ」への関心が高まっていくことが予想される。