短期売買派は売買の規律を明確化、あるいは資質を再確認

 筆者は、投資信託は長期投資が王道の金融商品と考えている。しかし、中には市場の短期的な変動に期待している投資家もいることだろう。短期売買派の投資家は、市場が急変したときにどんな行動を取るべきか。月並みではあるが、これはおのおのが考える市場見通しによって異なる。

 市場の急落は一時的なもので、今後の見通しは良好だと考えているのであれば、含み損に一喜一憂せず、継続保有あるいは追加投資をするべきだろう。逆に、悪い見通しがしばらく続きそうだと考えるのであれば、含み損があったとしても一旦リスク資産を縮小すべきだろう。いずれにしても、短期売買を行うときには、自分のなかで利益確定と損切りのルール(売買の規律)を明確にすることが重要だ。どうすれば良いか分からないという投資家は、自分に短期売買の資質があるのかどうか、あらためて確認すべきだろう。

短期売買から長期投資に移行するための処方箋

 短期売買、とくに株式ファンドなどの変動が大きい(リスクが高い)資産で売買を行っている投資家が、より安定的、かつ長期的な投資にスムーズに移行していくにはどうしたら良いか。まずは、リスク資産を縮小させることだが、損益状況やタイミングに悩むことだろう。

 痛みを伴わない方法としては、儲かっているものがあれば、今後の見通しは顧みず、儲かっているうちにポジションを縮小することだ。そして、余裕ができた資金で、より安定的なもの、あるいは、今保有している資産と逆の動きをするものに投資していくと良いだろう。含み損を抱えている場合は、資金に余裕がなければ回復するまで待つしかない。資金に余裕があるならば、積立投資などで買付単価を下げることで、より早く回復することを期待しながら、回復したところでポジションを縮小するのが良いだろう。

 あるいは、タイミングを考えずに着実に移行する方法として、今保有している資産を定期的に売却しながら、新しいポートフォリオに徐々に移行していく方法がある。例えば、株式ファンドを保有していたとして、これを損益状況に関わらず、3カ月や半年といった期間ごとに一定口数ずつ売却し、着実にリスクを抑制していく。

 一方で、より安定的あるいは逆の動きをするものに毎月積立などで着実に積み上げていくという方法だ。リスクの高い資産からリスクの低い資産に移行する場合、一気にリスクを落とした後に市場が急反発すると、せっかくの上昇機会を逃してしまうというデメリットがある(逆に急落した場合には、下落を回避できたということでメリットになる)。短期的に市場が上昇するか、下落するかを予測するのは難しいため、良くも悪くも効果をマイルドにさせるという点で、この方法を取っても良いだろう。

 資産運用においては、市場環境が良好なときは何も考えなくてもうまくいくものだ。市場環境が悪化したときこそ、自分に合った投資スタンスを見極める絶好の機会と考え、適切な対処を行ってほしい。