米国株式には「年末高」の季節性がある

 米国株式市場は8月から10月にかけて調整を余儀なくされました。債券市場の長期金利上昇を主たる悪材料にし、UAW(全米自動車労組)によるストライキ拡大、政府機関閉鎖リスク、中東情勢の緊張といった不安要因が重なり株式相場の地合いは悪化しました。

 ただ、長期目線で過去の市場実績を振り返ると、米国株式の好不調に概して季節性(アノマリー)が見られることに注目したいと思います。

 図表3は、過去30年(1993年~2022年)のダウ工業株30種平均の年初来推移を平均化したグラフです。傾向として、株価は夏から秋にかけて下落しやすかった一方、10月に底入れした後は11月と12月に復調に向かう「年末高」を経てその年の高値を更新した傾向が検証できます。

 こうした季節性の背景として、9月や10月にかけてはミューチュアルファンド(米国の追加型公募投信)やヘッジファンドによる「節税対策の売り」(利益の出ている銘柄と損失が出ている銘柄を売却する)が重なりやすく、秋以降は買い戻しが強まりやすかったとの説が有力です。

 明確な理由が定まっていないのでアノマリーと呼ばれますが、世界のファンドマネジャーやトレーダーが共有している参考情報といえます。

 一方で、10月下旬を起点とした株式の急反発を受け、目先は戻り売りや利益確定売りが先行して神経質な値動きに直面する可能性もあります。ただ、長期市場実績に基づく季節性は軽視できず、長期金利が安定を続ければ11月と12月に株式の復調が続いても不思議ではありません。

 米国株への投資については、押し目買いや時間分散を重視した積み増し買いが長期的な資産形成に寄与すると考えています。

<図表3>米国株式の「季節性」は年末高を意識させる

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(1993年~2022年)

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