米国の経済成長率は減速に向かっている

 株式のバリュエーションに影響を与える長期金利の行方を占うため、米国の経済成長率見通しを確認したいと思います。10月26日に発表された2023年第3Q(7-9月期)の実質成長率(前期比年率)は堅調な個人消費が全体を押し上げ+4.9%と市場予想平均を上回りました。

 ただその後、11月1日にISM(全米供給管理協会)が発表した10月の製造業PMI(購買担当者景気指数)と非製造業PMIはともに市場予想を下回り、ADP民間雇用報告による10月・雇用者増加数も市場予想を下回りました。

 さらに、3日に米労働省が発表した10月・雇用統計では非農業部門雇用者増加数が+15万人と市場予想を下回り、失業率は3.9%に上昇。時間当たり賃金の前年同月比伸びは+4.1%と市場予想を下回りました。

 図表2は米国の四半期別の実質GDP(国内総生産)成長率(前期比年率)の実績と市場予想平均(エコノミスト予想平均/Bloomberg集計)を示したものです。金融引き締めの累積的な効果に加え、多くの学生ローンの返済再開や過剰貯蓄の減少などにより、第4Q(10-12月期)の実質成長率は+0.8%に減速すると見られています。

 アトランタ連邦準備銀行が毎週発表して市場も注目しているGDPナウキャスト(目先の実質GDP成長率予想)も+2.0%に鈍化しています(8日時点)。

 図表2で示す通り、実質成長率は2024年に入っても第1Q(1-3月期)と第2Q(4-6月期)に低空飛行が見込まれている一方、景気の底割れは回避できる(軟着陸できる)と予想されています。

 こうした景気減速がインフレ率の伸び鈍化を通じてFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げサイクル終了に対する市場の期待を高め、長期金利は安定に向かうと思われます。長期金利安定は、バリュエーション面で株式の復調傾向を支えやすいと考えています。

<図表2>米国経済の実質成長率は減速すると見込まれている

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年11月8日)