FRBによる「利上げ打ち止め観測」は市場の支え

 一方で、インフレ率はFRBの物価目標(2%)まで減速しておらず、折に触れて「追加利上げ」を巡る不安が債券や株式を揺らす可能性はあります。市場は当面、原油相場が反発基調を強める中、来週13日に発表される8月CPI(消費者物価指数)に注目しています。

 前回(7月)FOMCでは、大方の市場予想通り小幅な追加利上げ(政策金利のFF金利上限誘導目標を5.25%から5.50%に引き上げた)が決定されました。ジャクソンホール会議での講演(25日)でFRBのパウエル議長は、今後発表される物価指標など経済データ次第で今後の追加利上げの有無を検討する姿勢を表明しました。

 ただ、7月FOMCでの利上げが今般の政策金利サイクルで最後の利上げとなり、米経済が景気後退を回避できるとの期待も浮上しています。仮に政策金利が昨年3月からの利上げサイクルの到達点に達したと想定すると、株式が復調をたどるサインとも考えられます。

 1980年代以降の7回の利上げサイクル終了後における米国株の平均パフォーマンスを振り返ると、「利上げ最終日からのS&P500指数の1年後騰落率は平均して+15.9%だった」ことが検証できます。過去の市場実績は将来の株式リターンを確約しませんが、概して市場が「利上げ打ち止め」を好材料にしてきた傾向を示します。

 今後、インフレ減速や雇用情勢の鈍化が鮮明となれば、政策金利据え置き予想が大勢となっている9月FOMCを経て、11月や12月のFOMCでもFRBが利上げ累積効果を見守る姿勢を維持する可能性はあります。

 図表3で示すように、先物市場で試算されている「2023年12月のFF金利予想」は年末までの政策金利据え置きを予想。「2024年12月のFF金利予想」は政策金利の低下(利下げ)を見込んでいることに注目したいと思います。

<図表3>先物市場は利上げ打ち止めを想定している

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2022年初~2023年9月6日)

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