米国景気にソフトランディングは見込めるのか

 市場では、米国経済が景気後退に陥らず「ソフトランディング」(軟着陸)を示現できるか否かが注目されています。そうした意味で、9月1日に発表された8月雇用統計の結果(非農業部門雇用者数の増加幅(前月比):+18.7万人、失業率:3.8%、平均時給上昇率(前年同月比):+4.3%)は市場の安堵(あんど)を誘いました。

 景気見通しに悲観的だったローレンス・サマーズ元米財務長官は雇用統計の結果を受け、「政策当局者がインフレ退治を進める中、米国が景気低迷を回避するにはまだ課題があるが、回避できる確率は高まっている」との見方を示しました。

 サマーズ氏は雇用統計が「非常に楽観的なシナリオに一致している」と述べ、雇用者数が市場予想平均を上回ったことや週平均労働時間が拡大したことを挙げ、景気がなお「強い」ことを示唆していると指摘しました。

 また、米投資銀行最大手のゴールドマン・サックスは4日、米国が景気後退に陥る確率を「15%」とし、従来予想の20%から引き下げました。

 6日にFRBが発表した米地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、米国の経済と雇用市場の伸びは7月と8月にやや鈍化。多くの企業は賃金上昇が短期的に広い範囲で減速するとみていることを示しました。FRBは「大半の地区の調査先が、経済成長は緩慢だったと指摘した」と述べました。

 図表3は米国の四半期別・実質GDP(国内総生産)成長率(前期比年率換算)の実績とエコノミストの予想平均を示したものです(予想は2023年7-9月期以降)。雇用情勢、個人消費、サービス部門の底堅さを背景に、4-6月期(+2.1%)に続き、7-9月期も+2.0%に成長すると予想されています。

 10-12月期は+0.4%、2024年1-3月期には+0.1%と伸びが鈍化するものの、実質成長率はプラスを維持してその後は復調傾向が見込まれています。「景気の底割れ観測」が後退し、ソフトランディング観測が浮上していることが分かります。

<図表2>エコノミストは「景気の軟着陸」を見込んでいる

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年9月6日)