日本市場では「インバウンド関連株」が堅調

 日本市場でも、日経平均が7月初旬に高値を付けて以降は上値が重い調整局面に陥ってます。こうした中、個人投資家を中心に物色人気が高まっているのが「インバウンド関連株」(訪日観光関連銘柄)です。

 日本政府観光局が16日に発表した7月の訪日外国人客数(推計値)は約232万人と前月比+11.9%、前年同月の約16倍に増えました。加えて、中国政府は10日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて制限してきた「日本への団体旅行」を解禁すると発表しました。

 中国から日本への団体旅行が再開されるのは、およそ3年半ぶりとなります。日本を訪れる中国人旅行者は、2020年以降の「ゼロコロナ」政策の影響で低迷。今年春ごろからすでにビザを取得している人を中心に個人旅行者が増えるなど徐々に回復傾向が続いていました。今回、「団体旅行」も解禁されたことで、日本を訪れる中国人旅行者の数は大幅に増えるとみられます。

 欧米、韓国、台湾などからの訪日客数は順調に回復してきましたが、コロナ禍前の2019年に最もボリュームが大きかった中国からの団体旅行者の解禁により、地方も巻き込んだ「モノ・コト消費」の需要回復に弾みがつくとみられます。関連業界で改善している企業収益は一段と増えそうです。

 実際、参考例として図表3で示した主な「インバウンド関連株」の「8月初来騰落率」は総じて堅調となっています。訪日外国人でにぎわっている百貨店、専門小売り、宿泊施設(ホテル)関連などの上場企業は決算発表で業績の改善や拡大を確認しています。中国からの団体旅行解禁による恩恵がインバウンド関連株の堅調に寄与する流れに注目したいと思います。

<図表3>インバウンド関連株の堅調に注目

主なインバウンド関連銘柄(参考例)

東証
コード
銘柄名 業種 年初来
騰落率(%)
8月初来
騰落率(%)
2780 コメ兵ホールディングス リユース専門店 124.2 23.5
8136 サンリオ キャラクター専門店 68.6 21.8
9722 藤田観光 宿泊施設 58.0 19.4
3086 J.フロント リテイリング 百貨店 32.7 15.2
3099 三越伊勢丹ホールディングス 百貨店 22.7 14.4
9616 共立メンテナンス 宿泊施設 7.6 14.0
2222 寿スピリッツ 加工食品 56.3 11.7
3088 マツキヨココカラ&カンパニー 食品・薬品 39.7 10.7
8233 高島屋 百貨店 22.2 9.0
7532 パン・パシフィック・インターナショナル 大規模小売店 19.0 3.9
*上記は主なインバウンド関連銘柄を「8月初来騰落率」の降順に示したものです。
出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2023年8月16日)

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