2社とも保有する外債に巨額の評価損

 欧米の金融不安は、「対岸の火事」でしょうか。日本の銀行に致命的な影響はなく、欧米のように銀行株が下がる理由はないと考えています。ただし、「対岸の火事」とは言えません。日本の銀行にもマイナス影響はあります。

 ドル金利急上昇で、米国の銀行が保有する米国債に巨額の評価損が発生していることが、米国の銀行不安につながっています。シリコンバレー銀行は、債券投資の損失拡大で破綻しました。

 日本の銀行も、ドル金利急上昇で、保有する外国債券に巨額の評価損が発生しています。

三菱UFJ、三井住友FGの「その他有価証券」の評価損益:2022年12月末時点

出所:両社の決算説明資料、▲はマイナス(評価損)を示す。三菱UFJの説明資料によると、同社の外国債券評価損は、ヘッジポジション等勘案後では約1兆円。三井住友FGも外債についてはヘッジ取引も使ってリスク量をコントロール

 日本の銀行にも、ドル金利の急上昇で評価損が発生しています。ただし、三菱UFJ・三井住友FGについては、保有する国内株式に巨額の評価益があるので、財務上の問題は発生していません。両社とも、国内株式や外債を加えた「その他有価証券」トータルでは、なお巨額の評価益を有します。

 なお、保有する外国債券に巨額の含み損が生じたことを、極めてネガティブにコメントするメディアもありますが、私はそうは思いません。金利上昇によって、将来外債投資で得られる利回りが拡大する効果、預貸金利ザヤが拡大する効果を勘案すると、金利上昇のトータル効果は、銀行業にとってプラスの方が大きいと考えています。

 両社とも、不良債権比率は低水準にとどまり、財務良好と評価しています。