金利低下でも高水準の収益を維持

 三菱UFJ、三井住友FGとも、金利低下期でも、安定的に高収益を稼いできました。「金利が下がると銀行の収益が悪化する」というイメージは、この2社には当てはまりません。

三菱UFJ、三井住友FGの連結純利益:2014年3月期実績~2023年3月期(会社予想)

出所:各社決算資料。2022年3月期は会社予想。三菱UFJは会社目標

 上の表をご覧いただくと、「金利が下がるとメガ銀行の利益が出なくなる」という株式市場の思い込みが誤りであることがわかります。両社の連結純利益は、2019年3月期まで、長期金利がどんどん低下していく中でも安定的に高水準を保っています。

 2020年3月期・2021年3月期はコロナ禍で信用コスト(貸倒償却および貸倒引当金繰入額)が増加したことによって、利益水準がやや下がりましたが、それでも高水準の利益を維持していたと評価できます。

 前期(2022年3月期)、三菱UFJと三井住友はコロナ前の水準に利益が戻りました。想定されたほど貸倒れが発生しなかったことから、貸倒引当金の戻入益が大きくなったことが貢献しました。

 ただし、前期の第4四半期にはロシア関連などで引当金や減損が発生して、利益水準が低くなりました。それでも前期、三菱UFJは最高益でした。低金利でも稼ぐメガ銀行の姿がよく表れています。

 前期でロシア関連の引当金は十分に積んでいるので、今期以降、ロシア関連で大きな損失が発生することはないと予想されます。

 このように、三菱UFJと三井住友FGは、海外収益の拡大とユニバーサルバンク経営(証券・信託・リース・投資銀行業務などの多角化)によって、低金利でも高収益を稼ぐビジネスモデルを確立していると考えています。

 今後、国内の長期金利の上昇が続けば、国内商業銀行業務の利益も拡大するので、さらに投資価値が高まります。ただ、国内の長期金利は足元下がっており、今後どうなるか不透明です。