世界の人口の8割弱は非民主国家に住む

 V-Dem研究所は、民主的であることの一つに選挙制度が確立していること、を挙げています。選挙は「数」です。お金持ちであってもなくても、有名であってもなくても、一人の有権者が持つ選挙権の数は「1」です。

 民主主義こそ、「数」を重視しているわけですが、その数の面で見ても、(先ほどの国の数のほかに)「非民主国家」が優勢になってきていることを示すデータがあります。以下は、自由民主主義指数0.5以上および0.5未満の国の人口シェアの推移です。

 人口が多いインドが、非民主国家から民主国家に(1970年代後半)、民主国家から非民主国家に(2013年)に移行しました。このことを機に、大きく人口シェアが変化しました。

図:自由民主主義指数0.5以上および0.5未満の国の人口シェア(1975~2021年)

出所:V-Dem研究所のデータをもとに筆者作成

  インドの近年の動向を振り返ってみると、2021年のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で、合意文書案内の「石炭火力発電の段階的廃止」の表現に対して中国とともに反対したり、ウクライナ危機勃発後、ロシア産原油を輸入し、西側が制裁を科すロシアの収益源になったり、2022年5月に自国の食料安全保障を優先して小麦の輸出制限をしたりしました。

 南半球を中心とした新興国・途上国の総称とされる「グローバルサウス」のリーダー的な役割を担いつつあるインドは、民主主義を良しとする西側諸国と距離を置く姿勢が目立っています。人口(数)が多い国の動向は、注意深く見守る必要があります。

 世界銀行のデータによれば、2021年時点で1億人以上の人口を有す国は14あります。その中で自由民主主義指数が0.5を上回る民主国家は、たった3カ国です(米国0.736、日本0.739、ブラジル0.513、2022年)。もはや「数」の面では、世界は「民主的」とは言えなくなっています。